航空機の計器をモチーフとした「BR 01」を筆頭に、オーシャンズ世代に厚く支持されるモデルを揃えるウォッチブランド、ベル&ロス。創業者のブルーノ・ベラミッシュとカルロス・ロシロを支える“第三の男”が、新作とともに来日した。
ベル&ロスとは?
1992年、ブルーノ・ベラミッシュとカルロス・ロシロの、2人のフランス人が設立したウォッチブランド。パリにオフィスを構え、スイスのラ・ショー・ド・フォンで製造。’97年、軍用時計のスタイルを踏襲した初のモデル「ヴィンテージ」を発表。2005年に発表した角型ケースの「BR 01」は、時計業界のみならずファッションシーンでも話題を呼び、ブランド躍進のきっかけとなった。現在、直営店は世界で12店舗を構え、80カ国以上で販売されている。
「誰の意見にも左右されない時計作りを続けていきたい」
角型ケースの名作ウォッチ「BR 01」で知られるベル&ロス。ブランド名は、クリエイティブ・ディレクターのブルーノ・ベラミッシュと、CEOのカルロス・ロシロという2人の創業者のラストネームに由来する。彼らを2010年から支え続けているセールスのキーパーソンが、ファビアン・ドゥ・ノナンクール氏である。
「創業者2人の情熱こそ、時計作りの原動力でしょう。高校時代から友人関係にある彼らは、四六時中コミュニケーションをとっています。ミーティングを終えたかと思えば、離れた直後に電話で話している(笑)。ベラミッシュは、職人気質でストイック。ロシロは、社交的で話好き。性格はまったく違いますが、非常に仲が良いのです」。
ベル&ロスの腕時計の特徴は、洗練されたミリタリースタイル。コレクション数が増え続けている現在も、一貫してそのスタイルは変わらない。
「2人とも軍用航空時計に強く惹かれてきましたからね。“装飾を排除した実用主義の時計”を作ることが目的。パイロットやダイバーといった過酷な環境下で働くプロたちに向けた時計作りが、ブランドの原点なのです」。
実用主義の腕時計を作る土台となっているのが、4つのデザイン哲学だ。
「視認性、機能性、信頼性、そして精度。例えば、インデックスのフォントや光を吸収するマットな黒文字盤は、本物の航空機の計器にも採用されているもの。その視認性は抜群です」。
昨年、20年以上にわたってブランドの屋台骨となってきた「ヴィンテージ」シリーズをリニューアル。デビュー当時の「ヴィンテージ」が本来革新的な腕時計だったことを思えば、進化を続けるのは当然のことなのかもしれない。
「元々このシリーズは、1940年代の航空時計を最先端の技術で蘇らせることが狙いでした。モダンデザインが主流だった’90年代に、時代に逆行してヴィンテージスタイルを追い求めていたのです。今でこそ復刻デザインは多く見られますが、当時としては画期的でした。クルマなども同じですが、リニューアルというのは“芯”を変えずにディテールをアップデートするということ。時代性を汲み取り、ユーザーを飽きさせないことも大事なのです」。
最新作「BR レーシングバード」にもそんな革新性が見てとれる。
「我々の重要なインスピレーション源である航空の世界を表現する時計。そのために、飛行機をデザインすることから始めました。航空専門家を迎えて、実際に飛行できる“BRバード”という飛行機を設計したのです。残念ながら、主に予算の問題で実際に作ることはできませんでした(笑)。この時計のデザインは、我々にとってはいわば“逆輸入”。特にそのカラーリングなどは、飛行機そのものをデザインしなければ生まれ得なかったと思います」。
今回の飛行機以前にも、時計を作る前にバイクやクルマをデザインしてきた実績を持つベル&ロス。こうした斬新な手法は実際のところ、ほかのブランドで目にしたことはない。
「誰の意見にも左右されない時計作りは、独立系の後発ブランドだからできること。いわゆるメガブランドでは無理でしょう。今後も変わらずに、自分たちがやりたいことを、思うままにやり続けていきたいですね」。
※1 斬新な手法
2014年にはオートバイ「Bロケット」、’16年にスーパーカー「エアロGT」、そして’17年にレーシングカー「ベリータンカー」をデザイン。「Bロケット」のみ、デザインに基づき実機を製作している。
髙村将司=文 加瀬友重=編集