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杉窪さんのパン作りにおける考え方
「パンづくりとはこういうものである」という公式があって、そのとおりにやればそれでよし、ということではなく、いちいち「なぜそうなっているのか」を確認しなければ納得できない。ただそれもメソッドの背景を理解するというだけで、全面的に受け入れるわけではない。
理想に到達するために、問題をいかに解決するかを考える。自ら試して答えを導き出す。常識を鵜呑みにしない。
例えば、通常パン屋さんが小麦粉の特徴を知るための数字として「蛋白値」と「灰分値」というものが明示されている。プロならそれを見れば、おおよそどんなタイプの小麦粉かはわかる。だが杉窪さんは絶対味見をする。曰く、「小麦粉は農作物だから」。収穫時期や天候など、小麦自体の生育コンディションによって仕上がりは左右されるから。実際に味を試してみないとわからない。

粘りを出しすぎず、スッと噛み切れるよう、生地には水をたっぷり含ませている。理想の食感のために必要な手法だが、そのため生地が柔らかくて安定しない。だからあんぱんやカレーパンも型に入れて焼く。
ここのパン、衝撃である。キャラクターの違う3種の食パンを食べ比べるのも楽しいが、身震いするほど美味かったのは皿上部の丸い「ソンプルサン」。まあとにかくモチモチ。割ろうとして手に持つと、そこでもう指が皮に食い込む。そして「割れない」。ちぎるというか引き裂くような感触。そしてとにかく柔らかくしっとりしながらも、スッキリと噛み切れる。噛み締めれば小麦の味が広がる。
翌日の朝食用に購入したのだが、当日の試食で完食。3日後に「おかわり」を買いに行った。
なお、ここまでの「365日」のパン知識、杉窪さんの本の受け売りである。判型はA5、つまりA4の半分。皿の左端に並んでいるのが3種の食パンと比べると、サイズの小ぶりさ加減が伝わるだろう。
焼き型のサイズは幅5cm×長さ14cm×高さ6cm。
都市部の住宅街の3人家族を想定し、食べ残して保存するのではなく、買って即フレッシュなまま食べ切ってもらおうという狙いだという。また、それぞれのパンが小ぶりだからさまざまな種類を楽しむこともできる。


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