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大ブレイクの秘訣

紆余曲折を経て、自らの才能を証明することに成功した長谷川は、なぜ、突然に大ブレイクできたのだろうか。何かきっかけがあったのかを訊くと、長谷川は当時のことを思い出すように、ライバルだった玉田圭司選手(現名古屋グランパス所属)とのエピソードを語ってくれた。

「きっかけは、ブレイクする前年の2004年でした。当時、タマ(玉田圭司選手)が柏レイソルで大活躍し、日本代表にも選出されるようになっていたのですが、私が柏レイソルに在籍していた頃、タマとはチームメイトで、同じポジションを争うライバルでした。
そして、当時は、タマは控えで、私が出場していたんです。それが、タマは日本代表として活躍するようになっているのに、私はJ2の試合どころか、練習試合にすら出られない。この差は何なんだろうと考え、箇条書きでタマと自分の良いところ悪いところを書き出したんです。シュートは自分が良い、ここはタマが優れているっていうように。
その中で決定的に私が劣っていることがありました。
あるとき、偶然、タマのコメントが書かれた記事を読んだら、 “前を向いたら必ず仕掛ける”と書いてあったんです。監督が何と言おうと、タマには自分の意思があった。自分を持っていたんです。
その当時の私はどうだったかと言うと、試合に出たいがために、監督の考えに合わせてプレーすることが正しいと思っていた。でも、タマは、試合に出られなかったときでも、自分を貫いていた。そこが違うのかなと思ったんです」。
長谷川は、監督の顔色をうかがい、監督に合わせようとしている自分に気が付いた。そして、監督が変わるたびに全部ゼロになっていることに気が付いた。2004年シーズン、長谷川が崖っぷちから蘇ったのは、ライバルと比較しながら、自分の特徴を客観的に見つめなおし、自分の特徴を出し続けることにあったというわけだ。
後編に続く。
 
瀬川泰祐=写真・取材・文


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