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2018.08.27

ライフ

インドから房総半島へ。海の近くでオーガニック豆腐屋を営む料理人


連載「37.5歳の人生スナップ」
人生の折り返し地点、自分なりに踠いて生き抜いてきた。しかし、このままでいいのかと立ち止まりたくなることもある。この連載は、ユニークなライフスタイルを選んだ、男たちを描くルポルタージュ。鬱屈した思いを抱えているなら、彼らの生活・考えを覗いてみてほしい。生き方のヒントが見つかるはずだ。
「37.5歳の人生スナップ」を最初から読む

 

房総半島の最南端で営む、オーガニック豆腐工房

「うちの豆腐は、世界でいちばん高いかもしれない」。
そう言って「白浜豆腐工房」の店主である安藤壮さん(44歳)は、にやりと笑った。
房総半島の最南端、波の匂いが鼻先をくすぐる白浜町に「白浜豆腐工房」はある。築50年の平屋を改築した趣ある古民家で、安藤さんは手作りの“手絞り豆腐”を販売している。
看板メニューの「白浜生絞り豆腐」は、ひとつ500円。決して安くはない金額だが、千葉県産在来種の有機大豆を使用し、毎日、生絞りでつくる無添加豆腐は話題を呼び、メディアにも取りあげられた。

「できたてを提供しているので、生産できる量は1日20〜30個と限られています。豆腐を入れる容器がプラスチックのパックだと再利用できないので、瓶詰めに変えたこともあって、500円。豆腐がその値段じゃ、なかなか買わないよね」。
そう言って苦笑する。
安藤さんの朝は早い。朝4時に起きて家から歩いていける距離にある海岸で軽くサーフィンを楽しむ。1時間ほどで戻り、料理の仕込みを開始。店がオープンする10時まで、豆腐作りに没頭する。

店内にある座敷では豆腐御膳やおからカレーなどのランチのほか、豆腐スムージー、おからを使ったデザートなどカフェメニューも展開。これらも素材にこだわった一品だ。
「バターや牛乳などの乳製品は使わずに豆乳を使用し、サラダ油の代わりに菜種油を使っています」。
白浜豆腐工房は環境への配慮やオーガニックを意識した豆腐屋さんなのだ。しかし、もともとオーガニックに関心を持っていたわけではなかったという。
「バーテンダーをやっていた20代の頃は、夜中3時にステーキとワインを詰め込むような生活をしていましたよ(笑)」。
そんな安藤さんが、なぜ白浜でオーガニックな豆腐店を開くことになったのだろうか。


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