「熱海でとれる地のものだけで、握ってみたい」
芹澤さんは地元出身ではなく、世田谷生まれの世田谷育ち。以前は東京の青山に自分の看板で店を持っていた。
じゃあなぜ熱海にきたのだろう。そこには30年来の付き合いのあるオーナーのすすめがあったらしい。
「そのオーナーが『熱海、すごくいいところだよ』と。でも去年、亡くなってしまってね。それで今後のことを考えたくなって、青山の店をやめ、それから1年間、アメリカのポートランドで過ごしたんです」。
ポートランドには「田舎の魅力」が詰まっていた。それはどこか懐かしさを残す熱海に通じるものがある。だから、日本に戻ったとき、亡きオーナーが言っていた熱海に店を出すことに決めたそうだ。
「熱海もずいぶん変わりました。でも、昔からずっと残っているものもたくさんある。そこがいいよね。25年前に寿司屋の社員旅行で来たことがあったんだけど、当時と同じ看板を見かけたりするから(笑)」。
芹澤さんは、鮨を握ってくれながら「いずれ熱海でとれる地のものだけで寿司を握ってみたい。それができたら贅沢だなあ」と夢を語る。
ちなみに、屋号の「梅清」は、ここ熱海が日本で一番早く梅の花が咲くことから付けられたそう。開花は毎年11月下旬から12月上旬にかけて。最後に出してくれた味噌汁をすすりつつ、そのころにまた熱海に来て、「梅清」の寿司を味わいたいと思った。
梅清住所:静岡県熱海市渚町5-4
電話番号:050-5595-7065
営業:17:00〜22:00 不定休
藤野ゆり(清談社)=取材・文