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手を汚していないからキレイごとが言える

例えば、もう時効でしょうから、人事を生業としてきた私のケースを、恥ずかしながらふたつお話します。ひとつは、ある新人が面接評定表にある「A・B・C・X」という4段階評価の「X」に異議を唱えてきたケースです。もちろん「X」とは「未知数のエックス」とかではなく、「バツ」の意味です。
面接評価がAからCであれば次に進む可能性があったのですが、「X」というのは「ここで選考終了」ということで、わかりやすく「バツ」としていました。新人は、「応募者はバツなどではなく、単に自社に合わなかっただけであり、そんな言い方はおかしいと思う」と素朴で純粋な主張をしてきました。
今ならまったくもってその通りと思うのですが、その時の私は「XをDに変えたら君は気が済むのか。別に言うことはわかるが(実際、後で変えた)、自社に入りたいと熱望している人を不合格にするという重さから逃れられる、免罪されるとでも思うのか。この偽善者が!」とまで言ってしまいました。
すがりつくように入社を希望している人を、私は最終面接官として何人も落としてきました。正直、ものすごく重い罪悪感?を感じています(今でも)。だから、「お前はまだ罪悪感を持つような責任ある仕事をしていないから、手を汚していないからそんなことが言えるんだ」と思ってしまったのです。
しかも、私も新人の頃、実は「X」って嫌だなと思っていたのが、今はもう変わってしまったことに気づき、その若者の純粋さに嫉妬してしまったのだと思います。海よりも深く反省しています。そのときの新人(もう立派な投資会社の社長です)にはこのネタで今でも責められているので、許してください。


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