ところで、代田橋に酒飲みの街というイメージはなかったが、皆さんそんなに飲むのだろうか。
「やばいですよ。甲州街道を挟んでこっち側は杉並区で、駅側は世田谷区なんですが、あっちの方はとくに酔っ払いが多いですね」
カウンターで飲んでいた常連さんたちが同意する。
「1時間ぐらい飲むと、友達5人ぐらいできますから。杏も含めた、この3人もそうですし」
ついでに、杏さんの印象も聞いてみると、「1年ぐらい一緒に飲み歩いていますが、バカでかわいいっすね。酔うとずっとニコニコしてるし、面白い奴ですよ」。
杏さんも言う。
「私、酔いが回ってくるとすごいアイデアが閃くんですよ。でも、朝起きると何も覚えてない。『あの閃きを返して〜』って毎回思います」。
ここで、店長の吉森康太さん(33歳)が登場。インパクト十分のTシャツが気になる。
「あ、これは下北沢の駅前とかで漫画を朗読してる東方力丸さんです」
それにしても、店内は大盛況だ。さっき入ってきたお客さんは「椅子が一杯だから、ひな壇でいい?」と言われていた。
さらに、さりげなく置かれているグッズ類がウイットに富んでいた。
ゆったりとしたテンポのレゲエをBGMに穏やかな時間が流れてゆく。客も楽しそう。杏さんも楽しそう。素晴らしい。
「今、人生で一番楽しいんです。ここでお酒を飲みながら週2回働いて、残りの2、3日は美容師の仕事をしてっていう生活が最高です」
ちなみに、彼女は祖父母の代から続く美容師家系。その強固なる遺伝子のせいか、美容師にありがちな“手荒れ”が一切ないという。
最後に、恒例の「スマホに入っている面白写真を見せて」という質問をした。しかし、すぐには出てこないようで、常連さんに「なんかある?」と聞く。
「いやあ、あるにはあるんですけど、あの突き抜けたどうしようもなさは写真じゃあ伝わらないっすね」
写真では伝わらないどうしようもなさ。これを体感するためには、実際に酒を酌み交わすしかないようだ。
杏さん、ごちそうさまでした。最後に、読者へのメッセージを。
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