「東京では正直ではいられなくなってしまう」と移住を決意
「自分や家族のこと、将来のことを見つめ直さなければいけないと、常にどこかで感じていました。このまま東京にいたら、正直じゃいられなくなってしまうような気がしたんです」。
正直ではいられない。その真意はこういうことだ。
クライアント相手の仕事は思考の軸が自分にない。例えば、「この企業ならこういう色かな」と、いつも軸足をクライアント側に置いてものごとを考える。立ち上げた会社が順調に成長していくと、なおさらその傾向が強まった。
「自分が本当は何を好きなのか、何をいいと思っているのか、だんだん見えなくなっていくんですね。『正直さ』を取り戻すことで新しいものを作りたかったし、自分が何者なのかも見えていくのかもしれないと思ったんです」。
地方移住はそうしたピュアな気持ちになるための選択だった。移住先を長野県富士見町に決めたのは、妻の要望を第一に考えてのことだったという。
「僕は海沿いの地方への移住も考えたんですが、妻の実家が富士見町の近隣の下諏訪町にあるので、子育てをするならやっぱり実家の近くに移るのがいいかなと。僕にとっては妻の望みをかなえるのが一番大事なので……」。
そう言うと「ちょっとかっこつけすぎかな(笑)」と照れ笑いするのだ
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