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「習いごと」は投資か、消費か?

といってもそれは、習いごとを「将来の投資」と考える場合の問題だ。そもそも、幼少期に習いごとをさせる理由は才能を開花させるための投資だけではない。むしろ「楽しい時間消費」と考える側面もある。
3歳を過ぎる頃、子供には「好き」「嫌い」という感情が芽生え、好きなことに夢中になりはじめる。子供は好きなことを見つけ、深掘りする天才だ。家にあるスプーン1本でも、楽器になるし、チラシの裏面は広大な空想キャンバスだ。すべてのものが新しく見える子供にとって、その知的好奇心は新しいものを見る度、触れる度に増大していく。
ピアノやバレエ、アートなど、趣向性があり専門性の高いジャンルの習いごとは、言ってみれば知的好奇心を深掘りする最高の遊び場でもある。日常では導けない「ものごとの奥の深さ」を体系立って理解し、その理解と技術を深めていく。その体験を、将来の投資ではなく、有意義な時間の消費と考えてみよう。遊園地に連れて行ったり、旅行に連れて行く消費とその家計の一環とも言えまいか。むしろ、そうした「楽しい時間消費」という目的のほうが利にかなっているのではないかと思う。
だとすれば、家族の家計の範囲内で、できる限り子供の知的好奇心を深掘りする機会を与えてあげることは、意味のある経済行為となろう。
「別にピアニストにしたいわけじゃない」という理由だけでピアノ教室に行かせないのは極論となり、「絶対音階を獲得させるため」とか「姿勢が良くなるかも」といったそれをどう役に立てるのか不明瞭な投資発想だけでは親子ともにモチベーションが持続しにくい。重要なのは、「そのとき、子供が楽しいか」だ。
都市部では、さまざまなジャンルの習いごとに溢れ、だいたいの教室では「体験教室」が用意されている。ただシンプルに一度ふれさせて、子供が興味を持てば家計の範囲内で続けさせてあげる。そして、3〜6歳までの楽しい日々を過ごさせてあげる。
習いごとはそのくらいの心持ちで向き合えば良いのではないだろうか。



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