時計には長針と短針が必要だなんて誰が決めたのか。針を変え、軸を増やし、最先端の技術で作られる機械仕掛けの世界は、洗礼された美しいデザインへと変貌を遂げる。そう、時計は芸術品なのだ。
HYT
HYT/H2.0
液体が時を指す、腕元の科学実験室
まるで科学の実験装置を思わせるようなスタイル。センターの分針に対して、時は文字盤の外周に配された毛管の緑の液体で表示する。
実は毛管内は、緑と透明の2種類の液体で満たされ、両者は決して混じり合うことなく、下部にV字状に配されたふいごにそれぞれ貯められている。ここに動力が伝わることで必要量の液体が送り出され、その境界線で時を示すのである。
しかも伝達される動力は、オーセンティックな手巻き式ムーブメントによって調速や脱進が行われ、正確な時を表示するための力が伝達される。このユニークな時計は、針を使って時刻を指すという計時の常識を、軽々と超えてしまった。
ULYSSE NARDIN
ユリス・ナルダン/フリーク ビジョン
革新の象徴にいよいよ初の自動巻きが登場
2001年にフリークが初めて登場したとき、誰もがその革新性に目を見張った。
今では多くの時計ブランドがパーツ素材として採用する熱安定性に優れたシリシウムをいち早く取り入れたのも、このフリークだった。
その革新性は現在も変わらず、17年を経て、初の自動巻きが登場した。時刻は、文字盤の回転ディスクに備えた白い三角ポインターと、中央の舟形を描くブリッジの先端の白い三角ポインターで指す。
このブリッジにはムーブメントを搭載し、自身の回転によって重力の影響を抑えるカルーセル機構にもなっている。また新開発のグラインダー機構は従来の2倍の巻き上げ効率を実現した。
HARRY WINSTON
ハリー・ウィンストン/イストワール・ドゥ・トゥールビヨン 9
シンメトリーに演出する3軸トゥールビヨン
トゥールビヨンの可能性に挑戦するシリーズは、今回で第9作を数え、ケースはコレクションでは最小の46.5mm径を採用。まず目を引くのが、直径20.5mmを誇る大型の3軸トゥールビヨンだろう。
内側、中間、外側のキャリッジがそれぞれ45秒、75秒、300秒で1回転し、シルエットはエメラルドカット・ダイヤモンドを象ったブランドロゴを思わせる。
その上部には、レトログラード式の時針と分針を左右にそれぞれ設け、美しい扇型のシンメトリーデザインを生み出す。また時針はジャンピングアワー機構により、心地良く瞬転するとともに、視認性に優れる。
GIRARD-PERREGAUX
ジラール・ペルゴ/ミニッツリピーター トライアクシャル トゥールビヨン
耳と目の両方で楽しむ、優雅な時の世界
時刻を音で伝えるミニッツリピータ−は、実用機能というよりも、時をよりエレガントに楽しむためのものである。そして時計の音響がまだ開発途上であることも、多くの時計師の情熱をかき立てる理由だろう。
ジラール・ペルゴの新作は、ケース内に、ミニッツリピータ−と3軸トゥールビヨンを備える。理想の音を追求するため、本来は背面にあるハンマーやゴングを正面に配置し、音響に優れるチタンケースを経て、外部へと広がっていく。
こうした音響効果に加え、時打ちの動作も視覚的に楽しめ、さらに3軸トゥールビヨンの動きが機械仕掛けの世界へと誘う。時計が芸術であることを改めて実感するのだ。
※本文中における素材の略称は以下のとおり。
SS=ステンレススチール、K18=18金、Pt=プラチナ