機械式時計は、原理こそ1世紀以上前のクラシックだが、時とともに研鑽され、それぞれの時代で新たな潮流を生み出した。
それは今も変わりなく続く。やがて後世において、その1本が時計を進化させたと称されるかもしれない。
前編に続き、後編をお届け。
HUBLOT
ウブロ/ビッグ・バン ウニコ レッドマジック
鮮やかなレッドは素材に懸ける情熱の色
現在、セラミックスは時計の外装に欠かせない素材になった。しかしその歴史はまだ浅く、さまざまな技術的ハードルがあるのも事実だ。
例えばレッドセラミックスもそのひとつ。既に黒、白、青など多くのカラーセラミックスが実用化されているが、鮮やかな赤はこれまで再現できなかったのだ。なぜなら、焼成時の高温に対し、顔料が反応してしまうからである。
これに対し、ウブロの研究開発部門は、セラミックスの加圧と加熱焼結の融合でついに鮮やかな赤を実現したのだ。
4年の歳月をかけて完成した情熱のセラミックスレッド。それは時計界からだけでなく、多くの産業界からも注目を集めている。
URWERK
ウルベルク/AMC
時計は原子と出会い、新たな概念に挑む
電子式時計における精度基準は、標準電波の送信局や遠く宇宙のGPS衛星から送られる日付・時刻情報のデジタル信号である。その基礎になるのが原子時計であり、精度はクオーツなどの比ではなく、何千万年に1秒の誤差というレベル。
ちなみに、最先端の研究分野である光格子時計になると、300億年で1秒も狂わないという。この原子時計の精度で機械式時計を合わせるタイムピースが登場した。
スーツケース然とした原子時計装置に専用の機械式時計をセットすると、深夜0時に超正確な時刻に補正するのだ。
開発に費やされた期間は、約8年。圧倒的な精度への情熱は、時の概念への新たな挑戦であり、そのあり方さえも変えるかもしれない。
FREDERIQUE CONSTANT
フレデリック・コンスタント/クラシック ハイブリッド マニュファクチュール
コネクテッドウォッチは次なる領域へ
スマートウォッチというITからの黒船襲来で、一時は揺れた時計業界。しかし、それも落ち着きを見せ始めている。
スマートウォッチがウェアラブルなデジタルデバイスという位置づけを確立したのに対し、コネクテッドという方向性から、従来の時計の延長線上として有用な機能を取捨選択する傾向にある。
フレデリック・コンスタントは機械式と電子式をハイブリッドし、スマホと連携しながらワールドタイマー機能や心拍数などの活動量や睡眠のデータを共有する。
なかでも独創的な機能がキャリバーアナリティクスだ。これにより、時計のムーブメントの歩度、振幅、振動のエラーを測定できる。デジタルと共存するアナログ時計なのだ。
※本文中における素材の略称は以下のとおり。
SS=ステンレススチール