機械式時計は、原理こそ1世紀以上前のクラシックだが、時とともに研鑽され、それぞれの時代で新たな潮流を生み出した。
それは今も変わりなく続く。やがて後世において、その1本が時計を進化させたと称されるかもしれない。今回はエポックメイキングな時計、前編。
PIAGET
ピアジェ/アルティプラノ-アルティメート・オートマティック
極薄ムーブメントに秘めたメゾンの創造性と矜持
ピアジェの極薄ムーブメントの歴史は、1957年の9Pにまで遡る。厚さ2mmという世界最薄の手巻きムーブメントであり、それはエポックメイキングとなった。
だがそれも通過点にすぎず、3年後には厚さ2.3mmの12Pを発表。自動巻きにおいても世界最薄を達成したのだ。
だがピアジェが極薄にこだわるのは、決して記録のためではない。それはムーブメントの薄型化で得られるデザインの自由度のためであり、ハイジュエラーの顔も持つメゾンにとっては創作の一部だから。
新作はケースとの一体構造設計とペリフェラルローターの採用でケース厚4.3mmを実現している。
LONGINES
ロンジン/マスターコレクション
年次カレンダーに込められた機械式の理想
2005年に誕生したロンジン マスターコレクションは、実用道具としての高い完成度と伝統が息づくスタイルで、ブランドの揺るぎないシンボルになった。
そして今年、満を持してアニュアルカレンダーを搭載。月の大小を時計が判断し、着用者は2月末日のみ修正するだけで、1年間正確にカレンダーを日捲りする。コンプリケーションに準ずる機構にもかかわらず、並列した小窓でデイデイトを表示するさりげないデザインも好ましい。
そこに込められたのは、より日常的な道具として機械式時計の完成度を追求する情熱。それは良心的なプライスにもしっかり反映されており、ブランドの誠実さがひしひしと伝わってくる。
BAUME & MERCIER
ボーム&メルシエ/クリフトン ボーマティック
日々をともに過ごし、寄り添う道具だから
ボーム&メルシエは、品質・デザイン・プライスの三拍子が揃ったブランドとして高く評価される。
初の自社開発ムーブメントとなったボーマティックにおいても、何よりも使う側の満足度を追求している。
1500ガウスの高耐磁性は、身の回りの磁気から精度を守り、120時間のロングパワーリザーブは、5日間身に着けずにいても動き続ける。これは安定したトルクを供給し、だからこそ日差-4〜+6秒の精度を保てるのだ。
さらにムーブメントに要する潤滑油から見直し、高品質のものを使うことで、通常は5年とされるメンテナンス頻度をさらにのばした。時計を生活道具として磨き上げた末のエポックメイキングである。
※本文中における素材の略称は以下のとおり。
SS=ステンレススチール、K18=18金、PG=ピンクゴールド