父親と中学受験 Vol.4
「仕事ができる父親ほど、子育てに苦手意識がある」。そんな傾向があることは、昔から根強く囁かれている。仕事で結果を出すための手法と、子供の素質を伸ばすための手法が相反することが多いからだ。しかし、いざ「中学受験」となると、子供と共通目標を立てて合格という結果を得るために、自分のビジネスノウハウが活きてくるはず! と意気込む父親も多い。実は「中学受験」には大きな落とし穴があるとも知らずに……。
この連載では、年頃の子供がいるオーシャンズ世代の父親が「中学受験に関わるときに注意すべきこと」を、教育・育児ジャーナリストのおおたとしまさ氏に直言してもらいます。
「父親と中学受験」を最初から読む妻に忖度を求める強権夫
「子供には勉強しろとは言わない」。「子育てのことは妻に任せている。自分はいちいちうるさいことは言わない」そういう父親もいるだろう。いかにもカッコいい。でも実はそれ、「オレの思い通りに妻がやってくれている限り、口は出さない」というだけの意味になっていないだろうか。
会社の中を見渡してみてほしい。「部下を信頼している」と言いながら、結果が出ていないと激しく叱責し、結局部下が自分のやり方に従うように間接的に仕向けているだけの上司がいないだろうか。それと同じである。
会社の中だけではない。政治の世界でも、スポーツの世界でも、「私はそんな指示はしていない」というのが流行っている。たしかに直接的な指示は出していないのだが、そうと匂わせるような言動をとり、周りの人間に勝手に忖度させる。まずい結果になったら「私の指示ではない」と逃げる。
絵に描いたような「卑怯」である。
同じ構造が、中学受験の家庭の中にも見られることがある。父親が、実質的に妻と子供を支配してしまう。父親が口うるさく言わなくてすんでいるのは、妻が夫の意をくんで、何から何までうまくやってくれており、なおかついい結果が出ているからというだけだ。
結果が悪ければ、妻のせいにしたうえで、ここぞとばかりに出しゃばる。本人的には、ピンチのときに現れて鮮やかに問題を解決して去って行くヒーローのつもりだが、妻からしてみれば、「私の苦労も知らないで……」である。
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