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2018.04.15

からだ

男の尊厳どころか命の危機も。40代が知るべきEDの正しい知識

37.5歳、”性”と向き合う(ED編)Vol.1
男のプライドをへし折る「ED」こと、勃起障害・勃起不全。笑い話で済ませがちだが、症状の裏側にはセックスの問題だけではない危険が隠れていることもある。カラダの曲がり角に差しかかるオッサン世代に捧ぐ、正しい性知識を得るための短期連載、第1回。
30代後半、同級生との飲み会で「ED」の話題が出たことはないだろうか。「最近、元気がないよ」とか「朝勃ちしなくなってね」くらいの話なら、誰しもが経験しているはずだ。とはいえ、下半身の話なのでつい笑い話にしたり、年齢を重ねたのだから仕方ないと割り切ったりして、あまり深刻な話にはならないかもしれない。
しかし、「ED」の裏側には、命にかかわるような体の異変が隠されている可能性もあり、決して笑い話では済まされるようなものではない。
 

ED患者は推定1130万人。40代の約4割はED


「ED=全く勃起しないとの勘違いが多いのですが、5回の性行為で4回は成功してもED、性行為では勃たずマスターベションだけで勃起するのもEDです」と教えてくれたのは、昭和大学藤が丘病院泌尿器科の佐々木春明教授。
EDは、軽度、中等度、重度に分けられ、性行為の際、途中で萎えてしまったり、勃起はするけど、以前よりも硬さがなくなったりするのも軽度のEDに含まれる。ある論文によれば、日本のED患者は推計で約1130万人と言われるが、これは中等度から重病に限ったこと。「軽度も含めると、40代の約4割はED」と佐々木教授は指摘する。
もちろん、この4割すべてが命に関わる体の異変を抱えているわけではない。
では、裏側に命の関わる異変があるEDとは一体なにか。それを正しく知るには、まず勃起の仕組みとEDの原因を理解する必要がある。

佐々木教授は勃起の仕組みをこう説明する。
「性的な興奮や刺激が脳に伝わると、血管や陰茎海綿体の筋肉内でcGMPという物質が出て陰茎の血管を拡げます。そうして、血管拡張された陰茎海綿体に血液が流れ込んで膨張する。この現象が勃起です。一方、PDE5というcGMPを抑える酵素が放出されると勃起は収まります」。
 

EDの原因は心因性と器質性。血管劣化のシグナルの可能性も


次に、EDの原因を尋ねたところ、2種類あるという。
「EDは、心因性と器質性に分けられます。心因性とはストレスやプレッシャーからくる精神的なもの。器質性は病気や身体の異常からくる肉体的なものです」。
30代後半〜40代前半にかけて多いEDは「心因性」だ。
「妊活中の子作り世代で、排卵日に性行為が義務化されている場合など、心因性EDになるケースもあります。また、仕事のプレッシャーやストレスも原因になるでしょう。朝勃ちはあるのに、性行為ができないときなどは、なにかしらのストレスを疑ってください」。
これはこれで問題だが、命に関わるような体の異変が隠されている可能性があるのは「器質性ED」だ。
「器質性EDで最も多い原因は、血管の劣化です。勃起は血液が海綿体に流れ込むことで起こります。つまり、動脈硬化で血管が劣化したり、血管内部が狭くなったりすることで陰茎への血流が滞ると、勃起しづらくなったり、硬さが十分でなくなったりするわけです」。
当然のことだが、血管は全身に張り巡らされているので、陰茎の血管だけが劣化することはない。陰茎の血管が劣化していることは、全身の血管が劣化しているということだ。
「分かりやすくいえば、陰茎の血管が劣化すればEDに、心臓の血管なら狭心症に、脳の血管なら脳梗塞になります。血管の太さは陰茎の根本が1〜2mm、心臓の冠動脈の根元が3〜4mm、頸動脈が5〜6mmです。動脈硬化は細い場所から進行するので、陰茎の次は心臓の冠動脈が詰まる可能性が高いのです」。
 

メタボリックシンドロームはEDの原因になりやすい

動脈硬化の原因は加齢以外に、高血圧、高脂血症、糖尿病などが上げられる。これらは、メタボリックシンドロームや生活習慣病に起因することが多く、不摂生な生活を続けてきた30代後半の人にとっては、心配なキーワードばかりだ。
「EDかなと感じたら、恥ずかしがらずに病院で受診することをおすすめします。もし、メタボリックシンドロームの自覚があるならなおさらです。その際は、血管がどの程度まで劣化しているのかを調べます。場合によっては、ED以外の疾患が見つかって、生活習慣病の治療が必要になるかもしれません。いずれにしろ、早期発見につながります」。
EDと言えば、男性機能の衰えばかりを気にしてしまうが、場合によっては深刻な疾患が隠れている可能性もある。軽度のEDだと感じたら、まず病院で検査を受けて、必要があれば生活改善に努めたい。第2回では、その生活改善の方法や治療について取り上げていこう。
取材・文=コージー林田
【Profile】
佐々木春明
昭和大学藤が丘病院 副院長・泌尿器科教授。1986年昭和大学医学部卒業。2007年同大学藤が丘病院泌尿器科准教授、2012年より教授。日本性機能学会専門医、ED診療ガイドライン作成委員の1人。ED偽造薬の実態調査「偽造ED治療薬4社合同調査結果2016」の監修にも携わり、TVなどのメディアを通して偽造薬の使用を回避する啓発活動にも積極的に取り組む。


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