腕時計の秒針の動きを注意深く観察したことはあるだろうか。クオーツ式なら1秒刻みにジャンプして進み、機械式ならテンプの振動数に応じて滑らかに進む。前者をステップ運針、後者をスイープ運針と呼ぶ。
「A.ランゲ&ゾーネ」の腕時計
脈拍計測などコンマ以下が不要な秒刻みを重視する場合、“スイープ”より“ステップ”のほうが読みやすい。そして実は機械式でジャンプ運針を行うことは容易ではない。その困難をクリアした機械式。しかもセンター針が“ステップ”で、サブダイヤルが“スイープ”という併設型で、プッシャーによりセンター針のスタート / ストップが可能という複雑機構だ。
ブランドのDNAであるこの機構を用い、昨年他界したブランド再興の祖であるウォルター・ランゲ氏(写真)を偲んだモデル。名門の気骨である。
中村利和(BOIL)=写真 松田有記=スタイリング