デニムは「使える服」の代表だ。それに異論なし。では、いったいどんなデニムがオッサンにとって最も価値があるのか。
シルエット、レングス、色落ち、ブランド……さまざまな観点から見たオッサンとデニムの理想の関係図。それを導くべく、自分なりのモノサシでデニムと付き合うオッサンに、ここ数年のベストデニムについて語ってもらった。前編はキング・オブ・デニムことリーバイスを偏愛する2人の意見。
洗練されすぎない格好良さを求めて
〜リーバイス「550」〜
荒木大輔さん(41歳)/スタイリスト
「スリムなデニムにボリュームのあるシューズを合わせたスタイルが理想なんですが、僕は脚が太いので自分流のシルエットを意識しています」と語るのはスタイリストの荒木大輔さん。ゆえに基本はテーパードシルエット。体型に合うフィットを探し求めた結果、ここ数年はリーバイスの「550」をよくはいているという。
「太腿あたりはゆとりを持たせて裾は細め。ライズも深く取っているので、僕のような脚が太い人にはマッチすると思います。個人的には野暮ったい雰囲気が出したいので、少しインチアップしてはいてますね」。
デザイナーズブランドが表現するようなユニークなシルエットを描く「550」。現行ではリリースしていないモデルだけに、今所有する1本を大切にはいているという。
ちなみに気になる色落ちについては、「あまりしていないものが基本。すごくリアルなダメージが入っていたりすると、ヴィンテージ好きなおじさんに見えてしまいそうで(笑)」というマイルールを明かしてくれた。
いわゆる美脚とは一線を画した美しさ
〜リーバイス「606」〜
そしてもう1本、荒木さんがマイスタンダードに挙げるのがリーバイス「606」。スリムデニムの大傑作である。テーパード派の荒木さんはこのモデルを15年以上前から愛用しているのだとか。
「昔は古着屋で状態のいいのを見つけたら即買ってましたね。『606』は今のスリムとは違ってシャープすぎないんですよ。昨今の美脚なスリムとは違った意味での美しさがある。最近はリーバイス ビンテージ クロージングで復刻されたのでそれを愛用。ワンウォッシュだったのを少しずつ育てています」。
こちらもやはり少しインチアップするのがお約束で、そのひと工夫で、荒木さんが狙う“洗練されすぎない格好良さ”がより引き立つのだとか。
端正に、ではなく、あえて野暮ったくはくデニム。そのために選んだテーパードが売りの2つの品番。脚の太さを隠しながらも個性を手に入れるインチアップというテクニック。荒木さんのデニム選びには、オッサンが参考にできるネタがたくさん仕込まれている。
“ワンクッションでキレイにはく”が流儀です
〜リーバイス「505」〜
吉原 隆さん(54歳)/ディストリクト ユナイテッドアローズ セールスパーソン
「タイトなデニムももちろんはくことはあるんですけど、自分の年齢で自然に似合うモデルといえば、やっぱり『505』かなぁ。ジップフライというのも楽チンでいいですよね」と話すのは50代も半ばになる吉原さん。ディストリクト ユナイテッドアローズでセールスパーソンを務めるファッションの大先輩だ。
彼が最近ハズせない存在だという「505」は、’80年代最後のアメリカ生産モデルで、程良く色落ちしたブルーがなんとも美しい。「股上が浅めで、永遠のスタンダード『501』よりもすっきりしたシルエットが好きなんですよ。これをいかにキレイにはくか。それがテーマですね」。
レングスは、軽くワンクッションさせる程度。パラブーツのシャンボードを合わせたときを目安にしているのだとか。「クロップドだと若すぎるし、長すぎるとダラシない。適度にすっきり見える丈感を大切にしています」。
そして、吉原さんのこだわりは裾から7mmに設定したシングルステッチにも反映されている。「『505』の裾は、これがいちばんキレイに見える。太すぎるとタフに見えすぎてしまう」。また、汚れた場合は「躊躇なく洗濯機で洗っている」。とにかく清潔感をもってデニムと付き合うのが吉原流なのである。
吉原さんがはいている’80年代のアメリカメイドにはオレンジタブが付く。これを春先は、「ノンネイティブのレザーのウエスタンシャツにさらりと合わせるのが気分。それでもハードに見えないのが『505』のいいところなんです」。
長谷川茂雄=文