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2018.03.12

たべる

ベジめし、ビッフェ戦略を知ってる?目から鱗のコンビニ弁当進化論

未知のコンビニ Vol.5
身近すぎる存在は、軽んじられる。コンビニなんて、その最たるモノ。「まさかこんなモノが潜んでいたなんて……」。いつもは見ない隣の棚を違う視点から眺めれば、そんな発見が数多ある。さて、知らないと損をする、コンビニの魅力を深掘りしていこう。
連載「未知のコンビニ」をはじめから読む
若かりし学生・新社会人の時代には、コンビニ弁当に対して“味が濃い” “栄養が偏っている” “野菜が少ない”というイメージを持っていたはずだ。しかし、ここ10年ほどで劇的に変化しているらしい。現在のコンビニ弁当は“ビュッフェスタイル”が主流だと、コンビニ記者の吉岡秀子さんは言う。元来のイメージとはかけ離れたリッチなキーワードだが、はたしてどのように変化しているのか?
現在のトレンドを知るため、コンビニにおにぎりや弁当が登場した1970年代から、現在に至るまでの変化を追ってみた。
 

一般的な“がっつり系”弁当が揃った’80~90年代

「コンビニにおにぎりが登場したのが1978年で、オリジナルのお弁当が揃い始めたのが1980年代です。1990年代までは、手探り期といえるでしょうか。いろんな種類に挑戦するというより、まずは市場にあるお弁当を並べようという視点で開発されていった時代です」(吉岡さん・以下同)。
幕の内弁当やのり弁など、駅の売店や街の弁当屋で売られているような弁当が、コンビニに並んだ。当時は男性客が多かったこともあり、ハンバーグやから揚げがメインのがっつり系が台頭。“味が濃い” “野菜が少ない”といったイメージのきっかけが、この頃のコンビニ弁当だ。質より量。食べ盛りの青年期にはピッタリの弁当だけに、貪るように流し込んだ思い出がよみがえる人も多いのでは?

当初は不定期な納品だった弁当が、1日3便制へと変化したのも’80~90年代で、作ってすぐ売るという形が確立されていった。開店中、常に商品が並んでいることで、コンビニ弁当の認知も広がった。

健康志向の高まりでコンビニ弁当が変化し始めた2000年代

「2000年代後半に入ると、コンビニ弁当が第2フェーズへと移行します。その主なきっかけは、2005年頃からセブン-イレブンでの導入を皮切りにコールドチェーンが確立されたことと、2008年に特定健康診査(メタボ健診)が始まったことといえるでしょう」。
技術革新により、産地から工場、店舗まで、野菜を低温に保って輸送できるコールドチェーンが確立され、弁当やサンドイッチなどの開発に鮮度のいい野菜を使いやすくなった。さらに、メタボ健診によって消費者の健康意識が高まり、これまでのコンビニ弁当が“不健康”というイメージを持たれるようになっていった。
「コンビニ側も『がっつり系ばかりではダメだ』と危機感を抱き、従来よりも野菜を多く使ったものや、あっさり味の和食系のお弁当が増えていきました」。
一般的な弁当をただ売るのでなく、世間が好むもの、求めているものを新たに考え、提供し始めたのだ。シャキシャキした野菜を使えるようになったことで、味のクオリティもぐんと上がっていった。
 

ご飯にサラダにスープ……“小容量” “買い合わせ”が今のニーズ

そして、現在は“ビュッフェスタイル”に変化してきている。コンビニ弁当に、小さなサイズのものが目立ってきたというのだ。
「2000年代からのヘルシー志向が高まり、今は多品目が重視されています。2011年頃から女性やシニアのユーザーが増え、ワンパックのお弁当より、好きなものを2~3点チョイスする“買い合わせ”が好まれるようになったからです」。
幕の内弁当ひとつで済ませるのではなく、ご飯ものとサラダ、スープ、デザートなどをそれぞれ選べるニーズに応えるべく、コンビニ弁当の小容量化や幅広い総菜の展開が進んでいる。焼きさばや豚肉のソテーがのったご飯だけが詰まった小ぶりの商品や、小さなカップに入ったサラダや総菜などを、見かけることも増えたはずだ。巷では「コンビニ弁当が小さくなった」などと揶揄されているが、それは戦略の結果なのだ。
「鶏めし御飯(かつおだし香るタレ付き)」330円、「豆とひじきのサラダ(生姜風味)」203円、「ツルもち餃子の野菜中華スープ」298円、「濃い抹茶わらび」120円/すべてセブン-イレブン
「ハンバーグ弁当などの大きなパッケージを、1個だけ持ち歩くのは恥ずかしいという意識って、男女関係なく多少はあると思います。コンビニ側もその感覚はわかっているので、同じ容量でもパッケージを2段重ねにしたり、1個ずつを小容量化したりして、手に取りやすい工夫をしているんです」。

がっつりボリューム系の昔ながらのお弁当と、スタイリッシュな2段重ねのお弁当だったら、後者の方が健康に気を使っているように見えて、堂々と持ち歩ける。コンビニ弁当の容器は、オッサン的にも重要なポイントといえそうだ。
「現代の日本では、『お腹いっぱいになればいい』で終わる人のほうが少なくて、多くの人は『野菜が足りないかな』と栄養バランスを考えると思います。そのニーズに対応するのがコンビニだし、弁当以外の飲み物やスイーツも買えるので、買い合わせしやすいという強みもありますね」。
 

そして、ヘルシー志向はここまで到達している……!

ヘルシー志向の最先端ともいえる弁当も登場している。ナチュラルローソンの「ベジめし」だ。細かく刻んだカリフラワーをご飯代わりにしたキーマカレーや、春雨をメインにした温サラダなどをラインナップ。女性だけでなく、中高年男性にも支持されているのだとか。
「ご飯をつかわないオムライス」標準価格500円/ナチュラル ローソン
ごはんの代わりにカリフラワーが! 物足りない……思いきや、満足感は十分
“不味い” “不健康”というイメージをくつがえすように、味や食材、容量や容器も変化してきているコンビニ弁当。体型や健康が気になるオッサンにとっても、うれしい進化だろう。野菜たっぷりのヘルシー弁当に、好みの総菜をプラス。食品棚をホテルビュッフェに見立ててみると、日々のランチ選びが、さらに楽しくなりそうだ。
【取材協力】
吉岡秀子
コンビニ記者、フリーライター。関西大学社会学部卒業後、会社員生活を経て、フリーライターとして独立。2000年代前半からコンビニ業界に密着した取材を続け、ビジネスや暮らしに役立つコンビニ情報を、各メディアや講演を通じて発信。著書に『セブン-イレブン 金の法則』(朝日新書)など多数。
取材・文=有竹 亮介(verb)
 


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