PREMIUM BRAND × DAILY STYLE
DUNHILL ダンヒル
昨年、新たにクリエイティブディレクターを迎えた英国の老舗ブランドはどのように進化したのか。6人の男のポートレイトを通じて、その真価を探る。
1893年の創業以来、英国紳士とともに歴史を歩んできたダンヒル。彼らにとってタキシードは重要なアイテムだ。こちらは、時代とともにマイナーチェンジを繰り返してきた定番モデル。バラシャ織りのモヘア混ウール地が持つ適度な艶が、見事にダンディズムを引き立ててくれる。この一着が相応しい場に出席する瞬間は、きっと充実しているに違いない。
その肌触りを表現するならば“とろけるよう”とでも言おうか。きめの細かい毛羽が生み出す陰影が美しいゴートスエードのブルゾンは、春夏に最適な軽さと柔らかさを手に入れた極上の一品だ。インナーには、ダイヤモンドをレトロにアレンジした小紋柄の開襟シャツを。あらゆる経験を通じ、磨かれ、輝きを放ち始めた大人の男にこそ似合うスタイルだ。
ネイビーブレザーにデニム、白いTシャツ。時代に即するのではなく、着る人によって印象を変えるワードローブにはタイムレスな魅力がある。この“タイムレス”という言葉もまた、ダンヒルにとって大切な価値観。よって多くのブランドが打ち出すような過剰なデザインは加えず、あくまで匿名的に、仕立ての良さで静かに存在感を主張する。
昨年、クリエイティブディレクターに就任したマーク・ウェストンはこう語った。「静かなる革命のはじまり」。彼が指揮を執る2シーズン目、その言葉は現実となって我々の目に前に現れた。ヘビーオンスなコットン地を使ったラガーシャツはメンズカジュアルにおいて定番といえるが、これまでブランドにはなかったアイテム。洗うほどに味が出て、体に馴染む。長く付き合えるマスターピースがまた増えた。
マーク・ウェストン率いる新生ダンヒルが得意とするスポーティなタッチ。今季はそのエッセンスに、イギリス王室のスポーツとして始まったセーリングも取り込まれた。ハリのあるナイロン混紡のヨットパーカをコットンショーツに合わせた爽やかなマリンスタイル。日焼けした肌によく似合う装いを見て、創業125年の老舗の若返りを感じる。
通常モデルよりも短丈のアンコン仕立て。上質なキッドモヘアが生むドレープとともにリラックスした雰囲気が漂うセットアップには、ダンヒルが培ってきたテーラリング技術が注がれている。その確かな作りによって、ドレスダウンしても品を損なうことなし。カジュアル化が進む紳士服におけるクラフツマンシップの重要性。それを改めて感じさせる一着だ。
赤木雄一(eight peace)=写真 菊池陽之介=スタイリング AMANO=ヘアメイク