未知のコンビニ Vol.3
身近すぎる存在は、軽んじられる。コンビニなんて、その最たるモノ。「まさかこんなモノが潜んでいたなんて……」。いつもは見ない隣の棚を違う視点から眺めれば、そんな発見が数多ある。さて、知らないと損をする、コンビニの魅力を深掘りしていこう。
連載「未知のコンビニ」をはじめから読むコンビニといったら発泡酒と乾きもの……というイメージも、今は昔。ここ数年で、オリジナルの酒類やつまみが増えているのみならず、品質の向上は凄まじい。舌の肥えた人にも、いや、舌の肥えた人こそが唸る逸品がここにある。
“手軽”に“リッチな気分にさせる”商品がズラリ
「コンビニは“変化対応業”だから、ライフスタイルに合わせてお酒や食べ物も随時変化しているのです」と話す、コンビニ記者の吉岡秀子さん。
「数年前から家飲みの需要が高まっていることもあり、コンビニでもちょい飲みできるものが増えてきています。おいしくリッチな気分にさせてくれるだけでなく、ワインの蓋がコルクではなくキャップになっていたり、おつまみも電子レンジで調理できたりと、手軽で簡単な部分も大きな魅力ですね」。(吉岡さん)
おいしいものをいかに安く、いかに手軽に食せる形で提供するか。コンビニ各社と製造メーカーや包材メーカーが協力し、その課題に向き合って、生み出されたハイクオリティの商品を紹介してもらった。
名門ワイナリーに直談判! メーカー本気の珠玉のワインたち
コンビニにワイン棚があること自体、見落としがちだが、そのラインナップやクオリティは、専門店に引けを取らないレベルにまで高まっている。コンビニとメーカーが粋を凝らした逸品がこちらだ。
ワールドプレミアム 750ml2017年末に登場したばかりの新シリーズで、人気の産地から6種類のワインが揃った。サントリーが、この商品のために各国の名門ワイナリーとタッグを組み、日本人の味覚に合うよう仕上げてもらったというこだわりのワイン。すべて2000円以下だが、レストランで頼めば5000円以上するであろうクオリティ。
【実際に飲んでみた!】
国内のワイナリーで作られた甲州をテイスティング。すっきりとしたフルーティーな香りが広がり、きりっとした酸味のある辛口の白ワイン。さらっとした飲み口だが、口の中でぶどうの風味が広がり、飲み応えがある。魚介系などあっさり系のつまみと合わせたい。
バロン・ラ・ヴェリエール 750ml成城石井との共同企画で生まれた直輸入ワイン。高級スーパーで知られる成城石井が直輸入していることから、レベルの高い味わいは推して知るべし。一方で、1080円という価格には驚きだ。ラベルも高級感があり、来客時に出しても様になる。ミディアムボディの「バロン・ラ・ヴェリエール」のほか、フルボディの「シュヴァリエ・ド・ランシュ」「ラ・シャトリューズ・ド・セナック」の2種(各1080円)もラインナップ。
【実際に飲んでみた!】
今回は、バロン・ラ・ヴェリエールと、ラ・シャトリューズ・ド・セナックを飲み比べ。バロン・ラ・ヴェリエールは、濃厚なボルドーの中でも比較的すっきりしていて、フルーツっぽさが強い印象。酸味や渋みはあまり主張せず、飲みやすい。ラ・シャトリューズ・ド・セナックはしっかりとした味わいで、口の中に甘みが残る。これは数多飲み比べてきた猛者にこそ、ぜひ試してほしい逸品である。
“レンチン”なのに、手作りのような温もりと満足感!
おにぎりや弁当だけでなく、おつまみにもなる惣菜も見逃せない。最新技術を詰め込み、手の込んだ料理をレンジで再現できるようになっている。料理をしないオッサンだからといって、冷えた味気ないつまみで家飲みする時代は終わったのだ。
チョリソ―オッサンが大好きな鉄板おつまみ。“レンチン”商品だからと侮るなかれ、そのパリッとした食感は感動すら与えてくれるはず。ピリ辛の「チョリソー」のほか、2種のソーセージを組み合わせた「スモ-ク&ホワイト」もラインナップ。
【実際に食べてみた!】
まるでボイルしたような食感とジューシーさは、かなり満足度が高い。肉の旨みとピリッとした辛みは、ビールはもちろん、ワインにウイスキー、あらゆるお酒にマッチする。何もつけなくても、素材そのものの味が楽しめるのは、レンジから出してすぐに食べたいオトコ心に響く。
やげん軟骨焼き鶏の胸骨の先端・やげん軟骨を、塩コショウでシンプルに味付けた一品。希少な部位の周囲にハラミを残した状態でカットした、ファミリーマートきっての人気商品。店頭に並んでもすぐに売り切れてしまうんだとか。
【実際に食べてみた!】
ピリッとコショウが効いて、ついついビールや焼酎が進んでしまう味付け。軟骨にプリッとしたハラミがついているため、しっかり鶏の旨みも味わえて、満足感が高い。ひとり飲みにちょうどいい量だ。
さばの塩焼“地味な見た目”と甘くみないでいただきたい。セブンプレミアムの四角いトレイの魚総菜は、吉岡さんイチオシなのだ。トレイのままレンジ調理ができるが、焼き立てのような焦げ目が香ばしく、ジューシーな仕上がりに。温めた後、トレイから皿に移すひと手間で、手作りかと感じられるような温もりが漂い、家飲みのテーブルがワンランクアップするだろう。
【実際に食べてみた!】
レンジから取り出すと、ふわりと魚の脂の匂いが広がる。新鮮な魚をその場で焼き上げたように、身もしっかりしていて、感動すら覚える。日本酒や焼酎だけでなく、スッキリ系の白ワインと合わせてもおいしい。
そこらのホテルのバーなどで飲んだら、1杯2000円近くするであろうワインがズラリ。さらにつまみも充実となれば、選ばない手はない。「安かろう悪かろう」と侮っていると、後悔することだろう。まずは今晩、ワイン棚に寄り道をしていただきたい。
【取材協力】
吉岡秀子
コンビニ記者、フリーライター。関西大学社会学部卒業後、会社員生活を経て、フリーライターとして独立。2000年代前半からコンビニ業界に密着した取材を続け、ビジネスや暮らしに役立つコンビニ情報を、各メディアや講演を通じて発信。著書に『セブン-イレブン 金の法則』(朝日新書)など多数。
取材・文=有竹 亮介(verb)