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2018.02.01

たべる

東中野のコアな酒場で、鳥カフェ巡りが趣味の看板娘にときめいた

看板娘という名の愉悦 Vol.1
好きなお酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気がよくて落ち着くーー。「行きつけの飲み屋」を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載はお酒を通じて人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
もうすぐ、バレンタインデー。中高生の頃は、放課後、用もないのに教室に残って女子の挙動を横目で伺ったものだ。
今となってはそんなドキドキ感もほぼなくなったが、それでも多少はそわそわする。というわけで、看板娘連載の第1回で訪れたのは、東中野の「バレンタイン」というバー。奇しくも、カップ酒を巡る連載の最終回で訪れた街である。
前回は西口、今回は東口が最寄り
徒歩数10秒で、じつにイイ感じの飲み屋横丁が現れる。
路地が三日月のように曲がっているから「ムーンロード」
入り口からすぐの場所に、目指す「バレンタイン」はあった。
日陰の雪はなかなか解けない
映画ファンやプロレスファンが集う店
狭い階段を3階まで上ってドアを開けると、数人の先客がいた。
棚には大量のDVD
さて、看板娘とのご対面だ。
安田三号さん(20歳)
ネームプレートは「3号」
ここで働くことになったきっかけを聞いてみた。
「お父さんが常連なんですよ。安田理央っていうライターなんですけど。ちょくちょく連れてきてもらっているうちに、オーナーから『バイトしない?』って誘っていただいて」
ちょっと待った。お父さん、超有名なライターさんじゃないですか。
びっくりしつつメニューを見る
彼女はイラストレーターの仕事をしつつ、春からはデザインの専門学校に通う予定だという。もちろん、「三号」というのはペンネーム的なものだ。
「3月3日生まれなので、3にちなんだ名前にしようと思って。ここでも、苗字ではなく『三号』とか『三号ちゃん』と呼ばれています」
まずはビール。お通しはとろっとろの牛すじ煮込み
当連載では、「看板娘」が勧めるお酒をひたすら飲むという趣向である。今、決めました。三号さんに聞くと、「常連さんの間では粉茶ハイが人気です」。いただきましょう。
どうぞー
ふだんはまったく飲まないが、これはこれで美味しかった。しかも、ごくごく飲めるので、ある意味危険なお酒かもしれない。
写真映えもよい
ここで、三号さんが不安そうに言う。
「というか、私なんかが『看板娘』でいいんでしょうか。自分の顔も好きじゃないし……」
すると、常連さんから「看板娘、全然いけるよ。三号は頑張って話についてこようとするところがかわいいんだよな」というフォロー。
横からファンキーなオーナーも口を挟む。
オーナーの宗方雅也さん(44歳)
「褒められたら『ありがとうございます!』って言えばいいんだよ。それがいちばん上手なお釣りの渡し方なんだから」
さすがオーナー、含蓄のあるお言葉だ。ちなみに、宗方さんいわく、「どちらかというとこの店は副業で、本業は『ハードコアチョコレート』というTシャツ屋なんです」。
手に持っているのは、Tシャツ専門誌で特集が組まれた号だ。
大人気の「コアチョコ映画祭」も主宰
カウンターでは、往年のプロ野球の話で盛り上がり中。映画、プロレスに加えて、野球ファンの常連客も多いそうだ。それにしても宗方さん、元中日ドラゴンズの名左腕、山本昌に似ている。
自身は阪神ファンだが、僕が中日ファンだと告げると、「郭源治が名古屋で台湾料理店を経営してますよ」という謎の情報を得た(あとで調べたところ、2013年に惜しまれながら閉店)。
投球フォームもそっくりだった
話を三号さんに戻す。お酒がほとんど飲めないうえに、飲食店のアルバイトは初めて。入った当初はいろんな失敗をやらかしたそうだ。
「お茶を炭酸で割ったり、ウイスキーをストレートで並々注いだりと、謎のお酒をたくさん作って笑われていました。でも、いろんなお客さんと話せるので、この仕事は楽しいですね」
喉が乾くとコーラを飲む
それにしても、棚のDVDの数は圧巻だ。
すべて宗方さんの私物だという
三号さんに好きな映画を聞いてみた。
棚から抜いたのは『Ed Wood』
「ティム・バートン監督の作品が好きなんです。ひとつひとつのシーンがすごくきれいで、観ていると幸せな気持ちになります」
自宅の本棚は9割が漫画(ピンクのぬいぐるみはラストに登場します)
好きな動物は鳥で、趣味は都内の鳥カフェ巡り。一番のお気に入りは高田馬場の「パクチーバル8889」というフクロウカフェだという。
また、自身でもインコを飼っている。
頭だけ黄色いので、名前は「きぃちゃん」
「すごくなついてきてめっちゃかわいい。ちゃんと喋れる言葉は『きぃちゃん』と『かわいい』の2つだけで、あとはなんかゴニョゴニョ言ってます」
粉茶ハイを数杯飲んで、順調に酔いも回ってきた。常連の皆さん、乾杯しましょう。
ピントがブレた
そうだ、三号さん。バレンタインデーの思い出は?
「チョコキャラメルを作ろうと思ったんですが、茶色だから焦げてることに気付かず、結局炭ができました。あ、今年のバレンタインデーは『バレンタイン』に出勤しますよ!」
最後にご本人から直筆のメッセージ
ごちそうさま。三号さんはオーナーと客、そしてインコからも愛される立派な看板娘でした。
【取材協力】
BAR バレンタイン
http://bar-valentine.jugem.jp


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