‘90年代にもアウトドアブームは起こっていた。でもそれはつまるところ、アウトドア用に開発されたアイテムを街で着るというもの。それから20年の時を経た今、街で着ることを前提に高機能ウェアを提案する新たな存在、「都市型アウトドア」ブランドが頻出している。その代表格を取り上げた。
MHW SPECIALLY FOR N.HOOLYWOOD
MHW スペシャリー フォー N.ハリウッド
2015年にスタートし、今秋冬で5シーズン目を迎えるマウンテンハードウェアとN.ハリウッドとのコラボレーション。今季は、バッグ2型のほかアウター4型を展開する。
写真の防水透湿素材のフーデッドコートは、ロング丈のボックスシルエットで、左右へハの字形に配した2段階の止水ジップがデザインのポイント。これぞ“街機能コート”の決定版である。
DESCENTE ALLTERRAIN & DESCENTE PAUSE
デサント オルテライン & デサント ポーズ
“すべてのデザインは機能に従事する”というコンセプトのもと、機能的なかつ都会的なコレクションを提案するデサント オルテライン。モードな雰囲気漂うシェルジャケット「レジリエント」は、ウエスト部分にボアクロージャーシステムが搭載され、ダイヤルを回すことでフィット感を高められる。
方やデサント ポーズは、高機能素材を日常着に落とし込んだライン。現在、もっとも注目を浴びる日本ブランドのひとつ、オーラリーのデザイナー、岩井良太さんが手がけている。こちらのテーラードジャケットは、太陽光を熱に変換し蓄熱保温性を高める、東レの素材「ダーミザクス」を採用。裏面に3D加工を施し高い快適性も保っている。
GOLDWIN
ゴールドウイン
1951年に創業し、現在ではさまざまなスポーツ、アウトドアブランドを展開しているゴールドウイン。その社名を冠したこちらは、スキーウェアブランドとしてスタートし、2016年にはスキーの機能やイメージを投影したライフスタイルウェアの展開も開始している。
スキーのシュプールラインをイメージしたポケットデザインが特徴のマウンテンパーカは、ファッション性と機能性を高次元で両立した1着。表素材はホームスパンのウールベースで、中綿に高い保温性を誇るプリマロフト、ライニングに優れた透湿性を誇る素材、パーテックスを採用している。
ソフトシェルのパンツは、シュプールラインの立体裁断のカッティングが特徴。ウエストはゴムバンド仕様なので、お腹回りが気になる人でも安心だ。
F/CE.
エフ シーイー
2010年に山根敏史さんがフィクチュールというブランド名でスタート。’16年に現ブランド名に改名し、アウトドアブランド顔負けの機能的なバッグの発表は、業界内でも話題となった。近年ではアパレルの展開、ナンガとのコラボレーションなど、活動領域を広げ、海外からも高いを注目を集めている。ちなみに、山根さんはバンド「toe」のベーシストとしても活躍する多才な人物。
上はダウンシュラフのメーカー、ナンガとのコラボレーションウェア。防風性、透湿性、ストレッチ性に優れる、第一織物のプライアンテックス素材を使用している。
グローブは、表地に上のマンパと同じ素材を使い、中綿に高い保温性と柔軟性を誇るプリマロフトを起用。指先にはタッチパネルにも対応出来る導電性繊維を採用しているから、グローブを付けたままスマホの操作も出来る。
PHENIX
フェニックス
フェニックスといえば、スキーウェアのイメージが強い。だが、ここ最近では都会に似合うモダンなウェアも増えてきている。このコートはいい例だ。インナーダウンが取り外せる3-WAYタイプで、あらゆるシーンに対応する汎用性がうれしい。表側のシェルは、ストレッチ素材&除電機能付きで、冬場の大敵である静電気への不安も払拭してくれる。
インナーダウンはノーカラーデザインなので、他のコートとの相性も良さそうだ。
さらに、都市生活におけるアウトドアの楽しみ方を提案するアルクフェニックスも面白い。コンセプトは、“歩くための機能服”。日常の定番的基礎運動である歩くという行為に着目し、テクノロジーを駆使した機能が組み合わされたウェアを提案するラインだ。新たに生まれ変わりつつあるフェニックス ブランドは、今後注目していくべき存在だ。
街から一歩外れた場所を想定し作られる、アウトドアブランドのアウトドア着。だからこそ、街とのミスマッチ感が選択のハードルを高めていた。しかし、ご覧になって分かるように、これらのブランドのアイテムなら、アウトドア未経験な大人でも拒否反応は起こらないはず。試してみる価値ありだ。