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2017.11.16

たべる

地下に秘密基地のような空間が広がる“ネオな”角打ち「山本商店」

「ネオ角打ち」という名の愉悦Vol.7
酒屋の店頭で飲むスタイルを「角打ち」と呼ぶ。「四角い升の角に口をつけて飲むから」「店の一角を仕切って立ち飲み席にするから」など名称の由来は諸説あるが、いずれにせよプロの酒飲みが集うイメージ。一般人には少々敷居が高い。しかし、最近では誰でも入りやすい新しいタイプの角打ちが続々と登場している。そんな「ネオ角打ち」の魅力に迫る連載です。
とにかく安い。ワインの種類が豊富。雰囲気は地下の秘密基地。そんなネオ角打ちが恵比寿にあると聞いた。
冷たい雨が降る夜でした
冷たい雨が降る夜でした
恵比寿駅西口を出て駒沢通りを代官山方面に進む。やがて、地下に降りる階段が見えてきた。この下にワンダーランドがある。
地下の角打ちとは珍しい
地下の角打ちとは珍しい
店の名は山本商店。創業73年、10年ほど前に客の要望に応える形で角打ちスタイルを導入したという。
ワイン約1000種類
ワイン約1000種類
輸入ビール約100種類
輸入ビール約100種類
角打ちスペースは階段の真下にあり、複数のグループで賑わっている。
近隣のアパレルメーカーの同僚とのこと
近隣のアパレルメーカーの同僚とのこと
店を切り盛りするのは3代目の山本さん。家業を継ぐ前は改造車を作る会社で働いていた。
丁寧に生ビールを注ぐ山本さん
丁寧に生ビールを注ぐ山本さん
自身でも走り屋に人気のランサーエボリューションをいじくり回し、筑波サーキットでタイムアタックを繰り返す日々を送っていたという。本気のやつだ。
立ち飲みルール
こちらが立ち飲みルール
店内は禁煙だが、吹き抜けで屋外にあたる角打ちスペースではたばこを吸える。
空の缶詰を利用した灰皿がかわいい
空の缶詰を利用した灰皿がかわいい
山本さんが言う。
「最初はお客さんもあまり来なかったんですが、近所にあった食べログの会社の人たちが飲みに来てくれるようになり、それをきっかけに口コミで店の存在が広まりました」
ウェブの口コミサイトの人たちがリアルな口コミで評判を広めたという構図が面白い。
満を持して、1杯目は何をいただこうか。山本さんにオススメを聞くと「飲みたいものを飲むのが一番でしょう」とのこと。そうだ。初心を忘れかけていた。
では、ホッピーセットをいただきましょう。
「はい、203円です」
えっ。安い居酒屋でも300円はするが。
本当に203円だった
本当に203円だった
スーパードライの生が280円というのも衝撃
スーパードライの生が280円というのも衝撃
感動に打ち震えながら角打ちスペースの末席で飲み始める。駅から少々離れているため、遠くからわざわざやってくるというよりは、近所にお勤めの人々が仕事帰りにふらっと寄る店のようだ。
客層は比較的若い
客層は比較的若い
1杯目をすばやく飲み干し、ナカの眞露をお代わりをする時点で再び衝撃が走った。
70円である
70円である
山本さん、いくら何でも安すぎませんか?
「うちは販売がメイン。角打ちはおまけみたいなものなんです」
店内にある最高値のお酒は25万円超のロマネ・コンティ
店内にある最高値のお酒は25万円超のロマネ・コンティ
常連だという女性客にも話を聞いた。
「会社がすぐ近くにあって。ワインが好きなので、ここでいろいろと教えてもらいながら試しています。私にとっては天国みたいなお店です」
「最近のお気に入りはこれ」
「最近のお気に入りはこれ」
「ミッシェルトリノ クマ」というアルゼンチンのオーガニックワインだそうだ。
さて、小腹が空いた。何か食べよう。缶詰コーナーを物色する。
イナバのタイカレーを発見
イナバのタイカレーを発見
奮発してレッドとイエローの両方を購入。さらにご飯パックを追加。ほどなくして、レンジとオーブンで温めたものが運ばれてきた。
「どうぞー」
「どうぞー」
締めて380円のぜいたく
締めて380円のぜいたく
特殊な空間のせいか、これがまた格別の味わいだった。隣ではアパレルチームが仕事論で盛り上がっている。
調味料も豊富で味の変化も自在
調味料が豊富で味の変化も自在
ホッピーを3杯とレモンサワー1杯を飲んで、締めは黒ビールにした。山本さんいわく、「これは業務用のギネスで、生と缶の中間のような味」。
おお、泡がキメ細かい
おお、泡がキメ細かい
地下の秘密基地で楽しく飲んでいるうちに、気づけば2時間以上経っていた。そろそろ、おいとましよう。
ふとテレビ画面に目をやると、グアテマラの大家族に密着したドキュメンタリーを放送していた。
「思いやる家族の気持ちはつながっている」
「思いやる家族の気持ちはつながっている」
原価に近い価格設定と旺盛なサービス精神。ここは店と客の気持ちもつながっている。そんなことを考えながら階段を上って基地を後にした。
取材・文/石原たきび


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