37.5歳、はじめての燻製vol.2 美味しく楽しめて、工作感がある。しかも、お酒のアテにぴったり。そんなオッサンの欲望を満たしてくれるのが“燻製”。アウトドアではもちろん、自宅でも作ることができて、高い人気を誇る男の趣味である。しかし、はじめの一歩踏み出すにはちょっとしたハードルを感じることも……。そんな燻製初心者へ、最初のハードルを越えるための短期連載をお送りしよう。
「37.5歳、はじめての燻製」をはじめから読む 燻製のあの香り 最近、なにかと話題の燻製。専門店が増えたほか、「家庭でできる」との触れ込み付きの情報もよく見聞きするようになった。しかし、初心者にとっては「家庭で、それも初心者がどこまでできるのか?」という心配は残るだろう。
そこで、水道橋にあるアウトドアをコンセプトにしたカフェ「cafe&ber BASE CAMP」の店長にして11月17日に『THE男前燻製レシピ77』(山と渓谷社)を上梓する、A-SUKEさんにお話を伺ってみよう。
A-SUKE。1978年生まれ。自身のアウトドア好きから、同じ趣味の人が出会い、集う場所作りを仕事にしたいと考え、プロダクトデザイナーからアウトドアカフェの代表に転身 燻製に適した食材、適さない食材 A-SUKEさん曰く、燻製界はまだまだ未踏の食べ物(誰も試していない)が多いとのこと。各自果敢にぴったり食材を探していただきたいところではあるが、初心者がいきなりそこに向かう必要もないだろう。
ではズバリ。初心者にはどのような食材がオススメなのか?
「初心者であれば、食材探しというよりもそのまま食べても美味しい『商品』を使い、そこに煙をちょっとかけてあげる。それぐらいの始め方が良いと思います。これなら失敗も少ないですし、燻製の楽しさも十分体験できますからね。私が特にお勧めするのは定番のチーズのほかポテトチップスなどのお菓子だったりします」
初心者お勧めの燻製食材4選&実食ひとことレポ 初心者にオススメの4品。ポテトチップ、ナッツ、チーズ、はんぺん そう語るA-SUKEさんが、初心者お勧めの食材4種をピックアップしてくれた。さらに実際に燻製を作っていただいたので実食レポートも行いたい。
なお、今回は家庭用ガスコンロにくべて使う燻製器を使用。底に燻製用のチップを「指全部を使ってひとつまみ分」敷き、その上の網に食材を並べた。火力については、チップから煙が出続ける最小の炎にし、食材を並べたら蓋をしないままで加熱。煙が出たのを確認してから、蓋をしっかり締めて適宜燻製時間をとった。以上が、共通する燻煙手順である。
【ポテトチップ】の燻製 お手軽度:☆☆☆☆☆ (燻煙時間の目安)2〜3分
余計な味のない「うす塩味」がお勧め。丁寧にやるなら、重ならないように並べること。適当に入れると重なったところに煙が乗らないが、気にしないならそれでも良し!
>>味レポ>>
ただ並べるだけのお手軽さ。なのに“燻製化”でパリッとした食感が強調され、またスモーキーな風味が鼻に抜けて抜群の味に。ポテトチップス「燻製味」が、存在していないのが不思議なぐらいに、違和感もなくとにかく旨い! なお、湿気るととたんにまずくなるとのことで、作り置きはできない模様。それが唯一の欠点(?)。ビールが欲しくてたまらなくなる味!
【ナッツ】の燻製 お手軽度:☆☆☆ (燻煙時間の目安)3〜4分
今回は、アーモンド、カシューナッツ、クルミの入ったミックスナッツを使用。こちらもポテトチップスと同じく、ただ並べれば良いのだが問題は、網にそのまま載せると網の目から落ちてしまうこと。アルミホイルで即席の皿を作り、それから網に乗せるなどの工夫が必要。煙がまんべんなく回るようにするためには、途中で数回かき混ぜると良い。
>>味レポ>>
ナッツの脂肪分、塩味にスモーキーな風味が乗っていい感じ。ただのナッツが高級感のあるお味に変身。ポテチよりは湿気りにくいので、若干の作り置きができるのもうれしいところ。ああ、ハイボールが飲みたい。
【チーズ】の燻製 お手軽度:☆☆☆ (燻煙時間の目安)3〜4分
ナチュラルチーズは熱で溶けやすいため網にのせても途中で溶け落ちてしまう。そのため、プロセスチーズの方が初心者には作りやすい。それでも、あまり高温になると溶けてしまうので火力の上げ過ぎには注意。今回も、一般的な6個入りのあのチーズを利用した。
>>味レポ>>
チーズの燻製、「スモークチーズ」はとっくに商品化されており、お馴染みの味ではある。とはいえ、燻煙直後のより強いスモーク感と、少し溶けた内側のトロッとした食感が楽しめるのは自作燻製ならでは。なお、翌日になると今度はスモーク感が馴染み、それはそれで美味しくなる模様。白ワイン、ウイスキーが進みそうだ。
【はんぺん】の燻製 お手軽度:☆☆ (燻煙時間の目安)3〜4分
食材の水分は、煙と反応して酸味、エグ味に変わる。そのため、上記3つの食材よりも水分の多いはんぺんは、ペーパータオルを押し当てるようにして水分を取る必要がある。キリがないので適当で構わないが、目安ははんぺん1枚につきペーパータオル1〜2枚を使う程度。そのあとは、ただ網に乗せればよい。
>>味レポ>>
おでん、もしくはチーズはんぺん焼き、ぐらいでしか口にしない和風食材のはんぺんが意外な味に大変身! 燻製したことで、ふわっと食感はそのままに味が濃縮された感じになる。日本酒、それも癖のある熟成古酒あたりをチビチビやったらきっとたまらない!
結局、最終的に酒が飲みたくなってしまうレビュアーの筆者だが、ただの飲んべえの味覚、などとあなどらないでいただきたい。5分にも満たない「燻製」というひと手間は、劇的な変化をもたらすのだ。
「燻製」と聞けば、ちょっと構えてしまうが「煙をちょっとかけてあげる」というA-SUKE氏の言葉を思い出したい。気負いなく、調味料をかけるぐらいの感覚で燻製が行えるようになれば、食卓はもっと豊かになるはず。
今回お勧めの初心者食材を皮切りに、みなさんにも燻製ワールドに足を踏み入れてみて欲しいと思うのだ。
取材・文=宇都宮雅之
写真=澤田聖司
<監修者紹介>
A-suke。アウドドアをコンセプトにしたカフェ「cafe&ber BASE CAMP」代表。アウトドアスポーツ、アウトドア料理の知識を生かし、雑誌への寄稿も多い。また、燻製やフライフィッシングなど各種ワークショップも手がける。
cafe&ber BASE CAMP 住所:東京都千代田区三崎町2-22-8 梨本ビル1F
営業:11:30〜24:30(L.O24:00)
定休日:土・日・祝
03-5213-4884
www.cafe-basecamp.com