誰もがよく知るイタリアのモードブランド。憧れだった昔とは違い、年を重ねた今は選択肢のひとつとなるだろう。とはいえ、デザインやテキスタイルがアバンギャルドだと敬遠している人だっているかもしれない。そんな大人の背中を押す、いつもの街角で、いつものデニムで、いつもの感覚で着られるアイテムをここに。
GIORGIO ARMANI ジョルジオ アルマーニ
ジョルジオ・アルマーニ。異名は「帝王」。’80年代に興隆したイタリアンモードの最重要人物で、今なお現役でシーンに影響を与える稀代のデザイナーだ。最高の素材と柔らかいシルエットと着心地を追求した服作りが特徴で、その思想から生み出されたアンコンジャケットは「服飾界の革命」と言う人もいる。
同時にニットの評価も高く、「ネオ・クラシック」をテーマに掲げる今季のものもシンボリックだ。幾何学的なシェブロンパターンで編まれ、どこかオリエンタル調にも未来的にも見える襟元のデザインは、まさにアルマーニの服。さらっと着るだけでもサマになる。
GUCCI グッチ
グッチの勢いが止まらない。2015年にクリエイティブ・ディレクターに就任したアレッサンドロ・ミケーレの服作りは、それまでのクラシックなものから、独創的で遊び心満点なものへと舵を切った。
それは、スポーティなカジュアルウェアをファッション原体験に持つオーシャンズ世代からミレニアル世代といった、新しい感覚のラグジュアリーファッションを求める人たちへのメッセージのはずだ。年齢も、ライフステージも、さすがに普通のアメカジは気がひける。でも……。そういう人たちにとって、今のグッチは福音となる。
DSQUARED2 ディースクエアード
ミラノコレクションで、ひときわ個性的なのがディースクエアードだ。ミリタリー、アウトドア、スポーツ、デニムといった、「アメリカンカジュアル」と括られる服をモードに表現して、他ブランドにはない世界観を作っている。
今季、初の男女合同開催により話題となったショーで、ひと際目を引いたアイテムが、レインウェアの名門ケーウェイとのコラボレーションアウター。フードにリアルファーがつくアノラックとモッズコートはこのために作られた特別モデルで、それぞれリバーシブル仕様。「K-WAY」のビッグロゴと袖の「DSQUARED2」ロゴが、ストリートライクで理屈抜きにクールだ。
カナダ出身の双子、ディーン&ダンが設立したディースクエアード。NYでデザインを学ぶなど、米国文化に触れてきた2人にとって、デニムは特別な存在。だからディースクエアードのデニムはどのモデルもシルエットが抜群で、リペアや色落ちの加工技術の迫力も見事だ。
写真の「クラシック ケニー ツイスト」は、腰回りにボリュームを持たせ、裾に向かって自然にテーパードする、現在いちばん美味しいシルエット。ヴィンテージデニムのような“ねじれ”も見逃せない。ヒッピポケットに付けられたメイプルリーフのワッペンがアイコニックで特別感を与えてくれる。
FENDI フェンディ
フェンディのウィメンズとファーのデザインを50年以上手掛けるカール・ラガーフェルド。
このファッションデザイナー界のドンをデフォルメしてラインストーンで描いたTシャツは、どんなキャラTよりも存在感がある!? だから、シャレがわかる大人に、こんな感じで、とびきりシンプルに着てもらいたい。
VALENTINO ヴァレンティノ
昨今、ヴァレンティノの服が面白くて注目される理由は、「オートクチュール」と呼ばれる高級注文服で使われる技術や仕様が、ハイカジュアルな服に自然と溶け込んでいる点にある。
例えば、このミリタリージャケット。ベーシックに着られそうなボディに施された刺繍は今季テーマの「タトゥー」がモチーフで、4人の職人が2日がかりで作った工芸品的価値を持つ貴重なもの。豪華絢爛な服とはひと味違う、このハイブリッドな感覚こそ、オーシャンズ世代が求める「ハイエンド」の正解だ。
PRADA プラダ
100年を超える歴史と伝統に現代的な革新性を調和させたデザインが世界的にも広く知られるプラダの服は、どこか哲学的で着る人にインテリジェンスを与えてくれる。
この幾何学模様の“柄シャツ”も、その配色からなのか、それともショートポイントの襟やスリムなシルエットからなのか、不思議と下品に見えないのだ。それは裏を返せば、好感度の高いメンズファッションで欠かすことのできない、「清潔感」を獲得しているということなのかも。
SALVATORE FERRAGAMO サルヴァトーレ フェラガモ
サイドゴアブーツとモカ縫いのトウを融合させたアッパーデザインと大胆なデザインのソールを組み合わせたオリジナリティ満点の1足。1927年にシューズメーカーとして創業したフェラガモだからこそ、その靴に服の添え物のような半端感は微塵もない。
このコーディネイトで着用した’70年代調のスエードジャケットのように、フェラガモの服はどこか控えめな印象で、その靴との調和を楽しむために存在しているようにさえ見える。「お洒落は足元から」というけだし名言を知る賢者ならば、この価値がよくわかるはずだ。
常にファッションの最先端をいくイタリアンモードの服。そのラグジュアリー感は魅力的だが、異彩を放つデザインを普段着る服としてどう折り合いをつけるかが問題。その回答として、これらのアイテムは理想的かもしれない。
森滝 進(MAKIURA OFFICE)=写真(人物・取材) 杉田裕一=写真(静物) 石黒亮一=スタイリング MASAYUKI(The VOICE)=ヘアメイク