クルマの部品のなかで最も複雑で性能や味付けに大きく影響するのがエンジンである。だからこそ、普段はそれ程エンジンに注目しなくとも、クルマ選びの際には一度じっくりと考えてみたい。さらにハッピーなカーライフが送れるはずだ。
そこで、胸を熱くするエンジン(心臓)を持つ世界中のクルマたちを、「こういうスペックがほしい!」というリクエストごとに集めてみた。
その1「荷物をたくさん積んでもスムーズに走りたい!」
荷物を目一杯積んだとき。人を大勢乗せたとき。アクセルを踏み出してもなかなか前へ進まないダルい感じを経験したことはないか? トルクが太いパワフルなエンジンを搭載していれば、もうあの不快感を味わうことはない! アクティブライフ派のキミのために。
トヨタ ランドクルーザー(4.7L V型8気筒エンジン)
世界の荒地や砂漠で〝頼りになるヤツ〞と呼ばれる日本生まれの本格SUV、ランクル。低速域から高速域まで普遍的にパワーを生み出す独自技術「DualVVT-i(吸・排気連続可変バルブタイミング機構)」を採用しているのがミソ。発進時はグワッと背中を押してくれて、ハイウェイではジャンボジェットに乗っているような感覚が気持ちいい。472万8437円~。
アウディ S4 アバント(3.0L V型6気筒ターボエンジン)
日本でも大人気のミドルサイズワゴン、A4アバントの上級スポーツグレードとして用意されているS4 アバント。ステーションワゴンとは思えない動力性能を生み出しているのは、最高出力354ps、最大トルク500Nmを誇る3LのV6ターボエンジン。このスペックながら10年前では考えられない燃費性能12.7km/Lを達成している。うん、立派であります。839万円。
その2「とにかく高性能で速く走りたい!」
とことんスペックを追求したザ・高性能エンジン。十分力強いBMW X6と、十分速いポルシェ911。そのどちらもエンジングレードを高めることで、公道を走るモンスターに進化させてしまったのだ。オッサンたちよ、こいつらを慣らすのは並大抵のことじゃないゼ。
BMW X6 M(4.4L V型8気筒ツインターボエンジン)
全長は5mに迫り、車両総重量は約2.5tの大型SUV。いわば速さや俊敏性を追求するのには不利な条件ばかりが揃っていながら、スポーツカー顔負けの動力性能を持つ〝快速の巨体〞がX6 Mである。ツインターボで強化された4.4LのV8エンジンは最高出力575ps 、最大トルク750Nm 。アクセルオンと同時に訪れる加速はカ・イ・カ・ン。1672万円。
ポルシェ 911 ターボS(3.8L水平対向ターボエンジン)
0-100km/hまでたったの2.9秒。どこで出せるの? な最高速度330km/h 。そんなレーシングカー級バケモノスペックを持つ現行911シリーズで最高のエンジンを搭載するターボS 。ポルシェ伝統の水平対向エンジンと高性能ターボの組み合わせはまさに世界最速の1台。この動力性能を受け止めるシャシーと足回りの設定も完璧。さすがポルシェ。2267万円。
その3「エンジンサウンドを響かせて走りたい!」
ドライブフィーリングを魅力的に感じさせる「エンジンサウンド」を聞きたい。イグニッションを回したとき。アクセルを踏み込んだとき、シフトをアップ&ダウンさせたときに発せられるのは、まるで獣の雄叫び。気づけばハンドルを握る俺の体内にはアドレナリンが!
ランボルギーニ ウラカン(V型10気筒エンジン)
エンジンサウンドといえばやっぱりランボルギーニの右に出るものなし。610ps、560Nmを誇るV10エンジンは自然吸気らしい甲高く乾いた官能的な音を奏でる。さらに回転数が5000近くまで上がると、突如吠えるようなワイルドなサウンドになるのが面白さ。圧倒的な加速フィーリングと相まった禁断の陶酔感は、選ばれた人のみ味わえる。2280万円。
フェラーリ 488GTB(V型8気筒ターボエンジン)
こちらも忘れちゃならない「マラネロの跳ね馬」の登場だ。職人のハンドメイドで1機ずつ丁寧に作られるエンジンはまるで最高峰の楽器のよう。本来であればターボエンジンのサウンドは控えめになるが、そこはフェラーリ。ターボ化しても伝統のサウンドは健在。街中で、ひと際甲高いエンジン音が聞こえたら、それは間違いなくフェラーリだ。3070万円。
その4「静かで振動も少なく快適に走りたい!」
静かなエンジンといえばハイブリッドがまずは頭に浮かぶはず。しかしここでは別の視点で、「ディーゼルなのに……」「大排気量なのに……」と、それぞれの特性を持ちながら異色の静かさを持つエンジンに光を当てる。これも昨今の技術革新の賜物だ。
メルセデス・ベンツ C220d(2.2L直列4気筒ディーゼルエンジン)
ガソリン車に比べエンジン音が大きいという弱点を持つディーゼル車だが、メルセデス・ベンツは独自の「BlueTEC」という技術でそのデメリットを完全に克服。ガソリン車に近い見事な静粛性を実現している。もちろん、乗ればディーゼル車らしく低い回転数からでも力強い走りが体感できる。「静かなディーゼル」の最有力候補である。550万円。
レクサス LC500(5L V型8気筒エンジン)
過給器付きのクルマ全盛時代に、貴重な自然吸気のV 8エンジン搭載車がこのLC500だ。最高出力475ps、最大トルクは530Nm 。街乗りでは大排気量とは思えないほど静かな走りを見せるが、回転数が上がると排気音をコントールしてスポーツカーのようなサウンドを奏でる設定が施されているのも、レクサスならではのおもてなしの精神? 1300万円~。
その5「やっぱり燃費は気になるけど元気良く走りたい!」
燃費を向上させる手段のひとつとして多くのモデルが採用する「小排気量エンジン+ターボ」の組み合わせ。数字だけを見ると不安を抱くところだが、小さくても元気に走る素晴らしいエンジンがコレ!
フィアット 500 ツインエア(1.2L 直列2気筒ターボエンジン)
「小排気量+ターボ」が普及し、1L前後のエンジンは増えたが、気筒数を2つまで落としているのはこのツインエアエンジンだけである。最高出力85ps、最大トルク145Nmと数字だけ見ると物足りないが街中では低い回転域から力強く加速し、レスポンスの良い走りが可能になっている。燃費も20km/L超えと非常に優秀。228万9600円。
ルノー ルーテシアS MT(0.9L直列3気筒エンジン)
ルーテシアの限定モデルであるS MT に搭載しているのが、本国では主流の0. 9Lエンジン。最高出力90ps、最大トルク140Nmと数字上は非力に見えるが、エンジンの常用域となる2250rpmという低い回転数で最大トルクを発生させ、MTと組み合わせた走りは非常に軽快&痛快。小排気量でもこれで十分満足! と思わせるほど楽しく走れる。199万円。
大子香山=写真 i c o n i c =構成