ホッピーが好きだ。好きが高じてメニューにホッピーがない居酒屋には基本的に入らない。というわけで、当連載では全6回にわたってホッピーへの愛を綴る。いわばホッピーに宛てたラブレターである。
毎日のようにお酒を飲む。人生においてお気に入りのお酒は時代ごとに変わってきた。入門はやはりビールだろう。日本酒も奥が深い。ワインや芋焼酎ブームもあった。数年前まではハイボールを愛飲していた。
しかし、いつ頃からだろう。ホッピー一択になったのは。「今日は何を飲もうかな」とは考えない。居酒屋の扉を開けて席に着くと「ホッピーください」。この言葉が自動的に出てくる。ホッピーを置いていない店からは自然と足が遠のく。
著名人のファンも多く、酒場紳士の吉田類はもちろん、北野武、茂木健一郎らもホッピー党を公言している。
ここまで人の心を惹きつける魅力とは? もともと戦後、ビールが高級品だった時代にその代用品として誕生したのがホッピー。甲類(アルコール度数25度)の焼酎をノンアルコール(正確には約0.8%の低アルコール)のホッピーで割って飲む。焼酎を「ナカ」、ホッピーを「ソト」と呼ぶ。
味について言えば、すっきりしているのである。低カロリー、低糖質で、ビールとの大きな差はプリン体がゼロという点。ホッピーを飲み慣れると、本来重要視されるビールなどの「コク」が邪魔になってきた。
さらに、自分で割って飲む場合は濃さを自在に調整できる。経験上、外1本で中を3杯頼める。しかし、中は気分次第で2杯にも4杯にもできるのだ。値段は店によって異なるが、セットで大体300円〜500円程度。中のお替わりは1杯200円ぐらいなので、リーズナブルなお酒だといえる。
個人的には2セット、つまりソト2本、ナカ6杯で気分よく酔っぱらう。3周すると完全にでき上がる。
最後に、これも強く推したい。「ハッピー」に似ているからだろう、「ホッピー」と口に出すとちょっと楽しい気分になる。注文した時点で楽しいお酒の場が約束されるのだ。実際に製造元のホッピービバレッジでも「ホッピーでハッピー」というフレーズを打ち出している。
そう考えると、「ホッピーバースデー」「ホッピーバレンタイン」「ホッピーウエディング」など、さまざまな可能性が広がっていく気もしてきた。
少々横道に逸れたが、「ホッピー」は魔法の言葉である。声に出して読みたい日本語である。当連載では来年で70周年を迎えるこの飲み物の魅力について、とことん追求していきたい。
取材・文/石原たきび
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