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2017.03.23

あそぶ

大人はドミノを倒さない ~ボードゲーム再入門①~

テレビ中継もあった「ドミノ倒し」。しかし「倒す」のは邪道な遊び方だった!?


30代後半から40代のオッサン世代であれば、’70年代後半から’80年代にかけて『木曜スペシャル』のようなテレビ特番で、世界記録に挑戦する壮大なドミノ倒しの中継番組が、しばしば放送されていたことを覚えている人もいるだろう。シーソーや吊り橋など複雑なギミックを使ったり、さまざまな色のドミノ牌でモザイク画を描いたり。並べ終わったドミノ牌の最初の一枚を、金髪美女や花魁姿の艶やかな日本人女性がセクシーポーズを決めてから指先でチョンと倒すという摩訶不思議な演出は、当時のお子さまたちにはいささか眩しすぎたが、数十万枚単位のドミノ牌が波のようにうねりながらギミックを通過し模様を描いていく様を、文字通り手に汗を握りながら応援していたものだった。
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当然、そうした子どもたちの興奮をおもちゃメーカーがほうっておくわけもなく、アニメキャラなどをモチーフにした「ドミノ倒し」の玩具も続々登場。テレビで観たギミックに自分で挑戦できるとあって、まぁまぁのヒット商品となっていた記憶があるのだが、筆者はそれらには目もくれず、テレビに映っていたような“本物”のドミノ牌を買ってもらった。当時、デパートや文具店で“本物”のドミノ牌が売られていたのである。
“本物”と強調したのは、それが「倒す」ための牌ではなかったから。そう、ドミノ牌とは本来、倒すものではなく、チェス、トランプ、バックギャモンと並び競技人口の多い「世界四大ゲーム」のひとつだったのだ。当時購入したドミノ牌にも、ちゃんとゲームの説明書が添付されていたのだが、残念ながらお子さまだった自分にはルールを把握することができず、結局はドミノ倒しに興じるだけで、その内に飽きて捨ててしまったようである。今思えば、なんとももったいない話。はたして「倒さない」ドミノとは、どんな遊びなのだろうか?

世界四大ゲームにも挙げられる「ドミノ」。「倒さない」遊び方は至極シンプル!

ドミノ倒しのイメージが強いためなのか、日本ではほとんど知られていない「倒さない」ドミノ。今では店頭で扱っているところも少ないが、ネット通販を利用すれば“本物”のドミノ牌を簡単に購入することができる。値段もピンキリで、安いものなら1000円程度。麻雀牌と同様、高級品になると10万円以上するものもあった。

今回購入したのはピンキリのピンだが、それでも十分に大人っぽい魅力を放っている。そういえば、これまた70年代後半から80年代くらいにブームだったクリームソーダ系の不良ファッションとかでも、ドミノ・モチーフって結構多かったですよね。
では、早速「倒さない」ドミノで遊んでみよう。お子さまだった自分には難解に思えたが、あらためて調べてみると、実際の遊び方は至極シンプル。トランプのように複数のゲームが存在するが、その大半は同じ数字がつながるように手持ちの牌を捨てていくだけだ。

基本ルールは、ほんとこれだけ。当時の自分はなぜ、こんな簡単な遊び方を覚えることができなかったのか。ちなみにドミノ牌は刻まれている数字の上限で種類がわかれており、「0-0」から「6-6」までの28枚を使う「ダブルシックス」という牌が、もっとも一般的に使われるという。

「5-5」のようなゾロ目の牌(ダブル牌)は、写真(上)のように縦に置く。

ゾロ目牌は左右に牌をつなげることで、さらに上下に枝を伸ばすこともできる。端の牌は写真(上)の「2-0」のように曲げて置いても構わない。ゾロ目牌ではないので、複数の枝を伸ばすような置き方はできない点に注意してほしい(この場合は「0」しかつなげない)。
このように、自分の番が来たら手持ちの牌をつなげていく。つなげられる牌がない場合は、山から1枚取る(つながる牌が出るまで取り続けるルールが多い)。これで手持ちの牌がなくなれば勝ちだ。

呑みゲーとして最適かつオシャレな「ファイブアップ」。これぞ大人のボードゲームだ!

ここまで読んで「わー、そんなに面白くなさそう…」と思った人も少なくないだろう。その通り。確かに、基本ルールだけでは、幼稚園生レベルの難易度でしかない。大人が遊ぶドミノは、あと少しだけルールが加わるのだ。その代表が「ファイブアップ」と呼ばれるゲーム。「ドミノ」といえば、このゲームを指す場合が多いという。

とはいえ、こちらのルールも難しくはない。写真(上)を見てほしい。つないだ牌の端が「2」と「3」になっている。このように5の倍数になった場合に、牌を置いたプレイヤーに得点が入るというのが「ファイブアップ」の特徴だ。ポーカーチップを1枚5点として、得点が入るたびにチップをもらうようにすると計算しやすいし、なんとなくカッコいい。

この場合は「2」のゾロ目牌(合計4)と「6」なので、10点加算されることになる。書き忘れていたが、このゲームでは、最初に5枚の牌をプレイヤーに配る。順番はじゃんけん等で決め、1番目の人が手持ちの札を1枚出してゲームスタート。このとき例えば「2-3」を出せば、いきなり5点が追加される。

枝の伸ばし方は、最初に説明したのと同様。写真(上)の例では、「5」「4」「5」「1」なので合計15点となる。つなげる牌がない場合は、山から1枚取る(つながる牌が出るまで取り続ける)。こうして最初に手持ちの牌がなくなった人が勝者となり、1回のゲームが終了する。負けたプレイヤーの手元に残っている牌の点数もすべて勝者の得点になる(各自残った牌の合計点を四捨五入するルールにすると簡単)。
このようにゲームを進めていき、最初に決めた得点(50点とか100点とか)に最初に達した人が勝ちだったり、あらかじめ何回戦と決めておいて最終の合計点を競ったりなど、ゴールのバリエーションはいくつかあるようだが、ゲームの概要はこんなところだ。2~4人で遊ぶのが基本。4人の場合は対面の相手とペアを組んでチームの合計点を競うルールもある。

5の倍数を意識しないと得点にならないため、なるべく大きい倍数を狙ったり、相手が倍数になりにくいつなげ方を意識したりなど、ある程度の戦略は必要となるが、だいたいのところは運(とある程度の暗算能力)が勝負となるこのゲーム。実際にプレイしてみるとわかるが、プレイ時間も短く、呑みながら遊ぶのにちょうどいい難易度と盛り上がり具合なんですよ。実際、海外でもバーで遊ばれることが多いそうで、まさにキングオブ飲みゲー。なにより、見た目がカッコいいので大人の嗜みとしても最適なんじゃないかと確信した次第です。これ、なんで日本では定着しなかったんですかねぇ。チョイワル風味のゲームをお探しの皆さん、ぜひお試しあれ!
文:石井ドミ郎
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