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2017.03.30

あそぶ

オッサンだからこそ愉しめるカルタ『狩歌』のススメ ~ボードゲーム再入門②~

あの頃ホビーの中でも飛びっきり地味だったアイツ、それがカルタ


ガンプラ、電子ブロック、「倒さない」ドミノ…と、回を追うごとに渋みを増していく、オッサン向けの“あの頃”ホビー再入門。今回は遂に「カルタ」の出番だ。
「”あの頃”ホビー再入門」を最初から読む
百人一首にいろはカルタ、ローカルなものでいえば群馬県民なら知らない人がいないという、かの「上毛かるた」などなど。オーシャンズがターゲットとするオッサン世代、というか日本人なら世代を問わず、誰もが一度は遊んだに違いない、ボードゲーム古典中の古典である「カルタ」。お子さんがいる家庭ならともかく、大人になってから仲間とカルタに興じた経験がある人は、かなり限られてくるに違いない。強いてオッサン世代に当てはめるなら、
「カレーが大好き、キレンジャー」
みたいな札が登場する当時の子ども向けキャラをモチーフにしたカルタが、昭和の一時代によく販売されていたことを思い出す人がいるかもしれないが、それだって進んで遊ぶようなものではなかったはず。カルタなんて、せいぜい親戚一同が集うお正月の、退屈しのぎ程度に遊ぶものというイメージが強いのではないだろうか。だがしかし! そんな地味なイメージがぬぐえないカルタの世界に、つい最近、思いがけないニューフェイスが登場したのである。それが、今回諸兄にオススメしたい『狩歌(かるうた)』だ。

昨今話題のインディー・ゲーム界から現れたカルタ界の超新星『狩歌』とは?

遊びに敏感なオッサン世代なら、ここ数年ちょっとしたボードゲームブームが起こっていることを知っている人もいるだろう。その中心となっているのは『モノポリー』や『カタン』のような海外製のボードゲームだが、一方でいわゆるインディー系のボードゲームが続々と登場しているのが、昨今のブームのユニークなところ。同人誌を販売するコミケに相当する「ゲームマーケット」なる同人ゲームの即売会が定期開催されるほど盛り上がっており、人気作が“メジャーデビュー”するケースもあるという。
『狩歌』(Xaquinel作/税抜き1800円)は、2016年のゲームマーケットで大きな注目を集めた、最新のインディー・ゲームである。現在では有名なボードゲーム専門店で取り扱いがあるほか、アマゾンなどのショッピングサイトからも入手できるようになっている(ただし、一部のサイトではプレミア価格となっている場合もあるので注意が必要)。

箱を開けると、中に入っているのは「胸」「キス」など、何やら意味ありげな単語が書かれた、通常のカルタでいうところの“取り札”のみで、肝心の“読み札”が入っていない。
実はこの『狩歌』で“読み札”にあたるのは、プレイヤーが用意した「J-POP」なのである。つまり、流れるJ-POPの歌詞を聴き、そこで使われている単語が書かれた“取り札”を取るのが、『狩歌』の基本ルール、というわけだ。

取り札には、それぞれ1~5までの数字が付記されており、最終的に“取り札”に書かれた数字の合計がプレイヤーの得点となる。「1点」の“取り札”のみ、3枚集めることで10点加算されるといった特別ルールもあるが得点を意識せず、通常のカルタのように遊ぶだけでも十分に楽しめる。ちなみにタイトルの『狩歌』とは、「カルタ×歌」から生まれた造語とのこと。作者のコメントによれば、J-POPには同じキーワードが頻出する曲が多いことから考案されたゲームだという。

「歌」×「カルタ」のコラボは、オッサン世代の琴線に俄然触れまくりMax!

なんという発想! というかここ、まさにオッサンの琴線に触れまくりだと思いません?
「なんか最近のJ-POPって、どれも同じに聞こえるんだよねぇ(オレ達の時代はさぁ…)」
なんて、飲み屋で流れる有線を聴きながら上から目線の愚痴をこぼした経験、オッサンなら誰でもあるじゃないですか。それを実地で検証できるのが、この『狩歌』なんですよね。
試しに、最近流行のJ-POPで遊んでみれば結果は明白。面白いように札が取れる曲がかかれば「ほらな!?」なんて鬼の首を取ったかのようなカタルシスに浸れるし、逆に頻出キーワードが出てこない曲に当たると「こいつ、意外と歌詞を考えてるな」なんて、いかにも音楽通を気取れたりするのが『狩歌』におけるオッサン的快感ポイントなんですよ。子どもや若者を交えて遊ぶ際には、イヤなウンチク親父にならないよう発言に注意ではあるものの、同世代で集まって遊ぶ分には無礼講。思う存分イマドキのJ-POPをディスってみるのも、たまのストレス発散には有効かと思う次第であります。

オッサン同士で集まって遊ぶなら当然、あのころ聴いた懐かしの名曲縛りで楽しむのもアリ。実際、同世代のオッサンを集めて青春時代の80~90年代ソングで『狩歌』してみたんですがバンド世代、カラオケ世代でもある我らだけに歌詞を暗記している曲も結構あって、これから歌われるだろうキーワードが書かれた取り札の上に手をかざして待機する人がいたり、並んでいる取り札全体を確認してから大量に札が取れそうな曲を選ぶ人がいたりなど、まぁこれが盛り上がること。取り札を並べるスペースが必要となるため、飲み屋で遊ぶのは難しそうですが、家に仲間を集めて遊ぶゲームとしては、予想以上に盛り上がると思いますよ。
ちなみに、イマドキのJ-POPをさんざんディスっておきながら、我らが懐かしの名曲も意外と頻出キーワードで構成されていることが発覚してしまうのは、オッサンにとって痛しかゆしなところ。他の世代を交えて遊ぶ場合は、なるべく新しい曲を選んでおいた方が、威厳を保てるかもしれませんねぇ。
文:石井大憲章
『狩歌』(Xaquinel)
https://medium.com/xaquinel
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