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2017.03.16

ファッション

続・オッサンは電子回路の夢を見るか? ~『電子ブロック』再入門②~

ラジオに! マイクに! ウソ発見器に!! 昭和少年憧れのガジェットだった『電子ブロック』


30代後半~40代のオッサンたちにとって、少年時代“高嶺の花”だった憧れのホビー『電子ブロック』に、改めて触れてみる今回の「再入門」。装置本体の組み立てを終え、いよいよブロックを使った電子回路の制作に入りたい。
「”あの頃”ホビー再入門」を最初から読む
前回、この歳になって初めて『電子ブロック』を体験する、と書いたが、記憶を掘り起こすと実際には1、2回くらい、当時の『電子ブロック』で遊んだことがある。裕福なお友達のヤマダくん宅へ遊びに行ったときのことだった。たぶん、親御さんが「教育のため」に買い与えたものだったと思しき『電子ブロック』は、タンスの上でホコリを被っていた。
当時購読していた学研の『科学』や『学習』に掲載された広告やテレビCMで、ラジオ、マイク、ウソ発見器など、さまざまな機械に“変身”すると謳われていた憧れの『電子ブロック』。これで遊ばぬ手はない! と、頼んで取り出してもらったのだが…結局ラジオも、ウソ発見器も、何ひとつ完成させることはできなかった。今思えば、説明書も読まず、ただイタズラにブロックを組み合わせるだけで、そもそも『電子ブロック』の使い方がわかっていなかったのである。
あれから数十年。前回組み立てた『電子ブロックmini』を前に、そんな記憶が蘇ったのは、結局いまだに『電子ブロック』を、どのように扱えば良いのか、さっぱりわかっていなかったからだ。えーと、ブロックを適当に組み合わせれば、なんかできるんじゃないの??

『電子ブロック』とただの『ブロック』、その最大の違いとは!?

途方に暮れている場合ではない。幸い『電子ブロックmini』には詳しい解説書というか、実際には『電子ブロックmini』という「ふろく」がついた本体であるところのムック『大人の科学マガジン』(学研プラス)がある。これを読めば、『電子ブロック』のいろはがわかるはずだ。

一読して理解したのは、紹介されている作例を再現するのが『電子ブロック』の基本的な“遊び方”である、ということだ。電子工作の知識がなければ、自分でオリジナルの電子回路を作成することなんて、まず不可能だったのである。ここが、『電子ブロック』と普通の『ブロック』との、最大の違いと言えるだろう(偉そうに書いてるけど、すごいバカっぽい…)。
出会いから数十年。ようやく『電子ブロック』の“遊び方”を理解したところで、早速実践だ。

紹介されている配置図に従い、指示された種類のブロックをはめ込んでいく。

作例によっては、さらにリード線やイヤホンなどを接続するものもある。いかにも電気仕掛けの何かを作っている感じ。頭の中の自分は、白衣を着た二瓶正也だ。

で、完成したのが電子ブロック6個とマイクを使ったアンプ。漏斗状の集音部に話しかけると、本体上部のスピーカーから声が出る。実はこれ、最初に行う動作チェックの手順なのだが、それでも電子回路を完成させたことには違いない。立派なマイ・ファースト『電子ブロック』である。

ほら、LEDだってちゃんと光ってるじゃありませんか。ホシノ君、実験は成功ですぞ!

コンピュータの仕組みまでわかる! オッサンこそ遊ぶべき『電子ブロック』の奥深さ

このように、紹介されている配置図に従いブロックを配置し、次々と電子回路を組んでいくわけだが、紹介されている50種の作例は、ウソ発見器やラジオのように“派手”なものばかりではない。むしろ大半は「トランジスタ検査機」とか「無安定マルチ回路」とか、電機に疎い人間にとっては「それがどうした?」と言いたくなるものばかりだ。もし、自分が子ども時代に『電子ブロック』を持っていたとしても、そうした“地味”な作例には目もくれず、ラジオやウソ発見器を作っただけで満足し、ヤマダ家のように『電子ブロック』をタンスの肥やしにしていたことだろう。
しかし、モノの道理をわきまえたオッサンとなった今は違う。たとえ意味がわからなくとも、とにかく作例1から順番に組んでいくのだ。地道な過程を経ることで、初めてわかる喜びがあることを、よく知るお年頃になったのだから。
別にすべての作例を一気に試す必要はないのだが、参考までにご報告すれば50の作例を組み上げるまでにかかった時間は、約4時間。その結果判明したのは、
「作例大事! あと電子ブロックやっぱ面白いしタメになる!!」
という事実である。一見、素人には意味なさげに思える単純な作例にも、実際に組んでみて解説を参照することで、意外な発見があるのが面白いところ。おかげで、これまでは言葉しか知らなかったトランジスタやダイオードが、どんな働きをするものなのか、まさに身をもって理解することができたんですよね。
また『電子ブロック』の醍醐味であるラジオの回路についても複数あり、いちばん単純なものから始まり、徐々にハイレベルな作例へと進んでいくのも凄い。

上記は、5つのブロックで完成する、作例中もっとも単純なラジオ(ダイオード検波ラジオ)なのだが、これでは室内だと、まったく電波を拾うことができない。しかし、

このように多数のブロックを駆使した「レフレックス1石+ICアンプラジオ」まで進むと状況は一変。アンテナ替わりのリード線をつなぐだけで、室内でもハッキリと放送が聴こえるようになるのだ。正直、解説を読んでも原理は今ひとつ理解できないものの、ラジオだけで8つもある作例を順番にこなすことにより、テクノロジーの進化みたいなものを実感できるのは、『電子ブロック』ならではの魅力だろう。
このほか、コンピュータが計算処理を行う際に使っている「論理回路」の原理がわかったり、自動車のウィンカーがどのようなしくみで点滅しているかがわかったりと、約4時間の間に得られた知識は、自分のような機械オンチにとっては驚くべき分量。お猿のゴローが宇宙猿人ゴリになったくらいの劇的な進化だ。

紙の上にエンピツで塗りつぶした線をなぞると音程が変わる「電子オルガン」のように、“派手”なお楽しみもあり、これらは子どもと一緒に楽しめそうだが、実は『電子ブロック』って、電機やITに疎いというよりも無知ゆえに畏れを抱いているオッサンにこそ、遊んでほしいオモチャなのではと、今回の「再入門」を通じて痛感した次第である。
ちなみに、今回紹介した『電子ブロックmini』は、大きさも手ごろでお部屋のインテリアにも最適。

こんな感じでレイアウトすれば、キュートかつ知的なお部屋を演出することができるのではないでしょうか? 遊びに来ているママ友が興味を持ったところで、
「まぁ、これがいわゆる『シュミット・トリガー式タイマー』の回路なんですがね…」
なんてさりげなくアピールすれば、旦那様のカブも数段アップしちゃうかも!?
文:石井ノ森敏タックン
(C)Gakken Plus Co.,Ltd.
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