上司の立場で「これだから“ゆとり世代”は困る」とか、言ってはいませんか?今日中に納品しなければならない仕事があるのに、定時になるとさっさと帰ってしまう――もしもそんな部下がいたとしたら、あなたはどんな声をかけますか?
次の3択からお選びください。
「そんな部下でもイケてる上司でいられますか?」を最初から読む(1)「これだから“ゆとり世代”は困る」「自分たちが若かった頃は、許されなかった」と世代の違いを指摘する
(2)「お客さまに失礼だと思わないのか」「チームのメンバーに申し訳なくないのか」とプロ意識の欠如を指摘する
(3)「帰っても構わないが評価は下げるよ」「君にはもうこの仕事を任せられない」と評価への影響を指摘する
どのパターンも、感情的になると思わず口をついてしまいそうなフレーズばかりですが、オーシャンズ世代のマネージャーならば、ここはいったん冷静になりましょう。上司の立場から発言するとなると、(1)(2)(3)いずれのパターンにもかなりの“リスク”が含まれているのです。
(1)の世代間ギャップですが、同世代と愚痴をこぼす程度なら許されたとしても、上司の発言としては問題ありです。「ゆとり教育世代だから」「自分の若い頃と違うから」という理由での指摘は、何の根拠もない差別になっています。ゆとり世代であることと、その部下が仕事を終えていないのに帰ることには、因果関係はありません。またオーシャンズ世代が若い頃とは、仕事環境も法律も変わっています。自分の過去を基準にして語ることは危険です。
(2)のプロ意識の欠如については、もっともな指摘だと思うかもしれませんが、そもそも上司の仕事の指示が的確でなかった可能性もあります。自分の指示のミスを、部下の“プロ意識の欠如”に押しつけているように思われるリスクがあるのです。
(3)の評価への影響を語ることも、(2)と同じく、第3者からは上司のミスを部下が被る構造に見えなくもありません。もしもあなたが嫌いな部下を、あえて今日中には納品できないような分量の仕事を与え、定時に帰ることを阻害していると見なされたなら、確実に“パワハラ”となるでしょう。
「そんなこと気にしてたら、上司は何にも言えないじゃん!」と思われるかもしれませんが、上司というのはそういう立場にあるのです。
さて、あなたならこんな部下、どう対処しますか?
「プロジェクト管理」と「労務管理」を、分けて考えるのがGOOD「仕事が終わっていないのに定時に帰る部下」は、考えようによっては“いい部下”かもしれません。「仕事が完了するまでずっと会社にいる部下」や「タイムカードを押した後にサービス残業を率先してやる部下」よりも、労務管理の点ではずっとやりやすいからです。
上司に必要なマネジメント力の中には、(A)仕事を完遂させる力=プロジェクト管理能力 (B)人財を活かす力=労務管理能力の、大きく2つがあると考えます。売上・利益に直結しやすいのはプロジェクト管理能力なので、マネージャーはどうしても(A)に目がいきがちです。だからこそ(B)労務管理については労働基準法などが法制化され、労働基準監督署の監視が進んでいるとも考えられます。
私が対処するなら、「仕事が終わっていない」ことと「定時に帰る」ことは分けて考えます。そして「定時に帰る」ことに問題があるのではなく、「なぜ仕事が時間内に終わらないのか」が問題であることをまず部下に理解してもらい、その後に対策を話し合います。そのとき上司の立場が絶対にならないよう、第3者として人事部や他の部署の上司にも入ってもらうとより良いでしょう。
「みんな頑張っているのに、さっさと帰りやがって!」という感情こそ、ブラック労働の温床なので、イケてる上司ならばそんな感情はさっさと捨て去るのが吉ですよ。
次回はレベル4「給与に不満をもらす部下」です。
取材・文/藤井大輔(『R25』元編集長)
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