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2017.02.09

あそぶ

時間よ、止まれ… ~ガンプラ製作編③~

接着剤薄いよ、何やってんの!

©創通・サンライズ
ある程度の経験と能力を身に付けた、大人だからこそできるガンプラを目指すこの企画。仮組みを終え、完成像がイメージできたところで今回は、まさに少年時代の自分に誇ることができる、プラモデル製作の醍醐味ともいえる工程にチャンレジしたい。
「”あの頃”ホビー再入門」を最初から読む
最近では接着剤を使わないお手軽なスタイルが主流というガンプラだが、あの頃の少年たちが手掛けた、現在でも購入することができる「旧キット」は、接着剤を使った貼り合わせが基本。接着剤の付け方が足りずパーツが上手にくっつかなかったり、逆に余計につけ過ぎてパーツや洋服を汚してしまったりした経験は、当時のガンプラ少年なら誰でもあるはずだ。つまり、接着剤使いは旧キット・ガンプラ製作最初の難関というイメージである。

しかし! すべてにおいて少年時代の3倍以上の能力を身に付けたオッサンにとって、接着剤使いなど恐れるに足らぬもの。しかも、多すぎず少なすぎず適切な量を塗ることが大事なのかと思いこんでいたが、前回も紹介した『ガンプラ入門』(野本憲一/株式会社ホビージャパン)によれば、むしろつけ過ぎくらいでちょうどいいのだとか。
©創通・サンライズ
形状によってもコツは違うようだが、ポイントはパーツの両面にしっかりと接着剤を塗り、接着剤の成分でプラスチックが溶けるまで少し待ってから、しっかりと押さえつけるように貼り付けること。接着剤の成分で溶けたプラスチックがパテ(穴埋め剤)のような役割を果たし、多少の歪みがあっても隙間なくキレイに貼り合わせることができるというのだ。
©創通・サンライズ
この方法なら、パーツ間に出来てしまいがちなスキマに悩まされる心配も少ないそうである。パーツを貼り合わせる際に得られる、ムニュっとした感触は当時は知らなかったもの。なかなか気持ち良いのだが、ぼんやりして貼り合わせ面がずれてしまうのには要注意。後述する次の工程「継ぎ目消し」を楽にするため、繊細な調整が必要になる。接着剤が乾くまで、時間は十分あるので大人の冷静さで対処しよう。
さらに注意したいのが、接着剤が「乾ききる」までの時間だ。接着剤は乾燥することで容積が減少する。つまり十分に乾いていない状態で「継ぎ目消し」を行うと、後で「ヒケ」と呼ばれる引っ込みができてしまうというのだ。もちろん、これは参考書である『ガンプラ入門』で得た知識。少年時代のような気の短さで作業を進めていたら、哀しい思いをしたところである。ちなみに、接着剤が完全に乾くまでの時間の目安は2~3日とのこと。はやる気持ちを抑え、いったん作業を中断することにした。慌てず焦らず、モチベーションを保ちながら完成を目指すのも、大人のプラモ製作の嗜みといえるだろう。

見せてもらおうか、大人の継ぎ目消しというものを!

接着から3日後。いよいよ次の工程「継ぎ目消し」である。
©創通・サンライズ
ここで用いるのは「フィニッシングペーパー」と呼ばれる、プラモデル向けの紙やすり。目の粗さが違う紙やすりを、粗いものから順番に使い、貼り合わせでできた継ぎ目を削り取り、さらに表面を滑らかにしていくのだ。
©創通・サンライズ
よりハイクオリティなガンプラを目指していた少年なら、「継ぎ目消し」の工程を経験したこともあるはず。とにかく根気と丁寧さが必要とされる作業だ。筆者も少年時代、近所のプラモが得意な上級生に影響され、継ぎ目消しに励んだものだが、そこは子どもの飽きっぽさ。いい加減なところで妥協してしまい、塗装後もしっかりと継ぎ目が見える、残念なガンプラしか作ることができなかった。
しかし、大人になった今は違う。大きな仕事に臨むくらいの責任感で、あの頃の自分が成し得なかった美しい仕上がりを実現させるのだ。そのためには、とにかくコスる、コスるべし! 始めてみればわかるのだが、実はこの作業、かなりハマる。自分が頑張った分だけ、細かく気を配った分だけ継ぎ目がきれいになくなっていくという、なんともいえない達成感があるんですよね。
©創通・サンライズ
逆にいえば、手を抜いたところは如実に結果に反映されてしまうのだが、そこもまたやりがい。あの頃の自分に見せてやりたい、という一心でひたすらやすりがけに精を出していくうちに、これが無我の境地かと思うような、没入状態に入っていく。いつまでも、継ぎ目消しを続けていたい。時間よ、止まれ…というのはさすがに大げさだが、これだけ無心で夢中になれる作業をしたのは、かなり久々なのは間違いない。日常のウサやストレスを忘れたい諸兄にも、ぜひオススメしたいものである。

美しいものが嫌いな人がいるのかしら。だからサフを吹くのじゃなくて?

さて、継ぎ目消しも一通り済ませ、次はいよいよ塗装の工程へ! と行きたいところだが。より本格的な仕上がりを目指すのであれば、その前にひと手間かけておきたいもの。それが下地塗装。サーフェイサーと呼ばれる下地剤を塗布する工程だ。モデラーの間では「サフ吹き」と呼ばれるらしい。

サフ吹きは、スプレータイプのサーフェイサーを用いるのが一般的という。『ガンプラ入門』の教えに従い、手を汚さず、まんべんなく吹き付けられるよう模型店などで購入できるプラモ塗装用の持ち手も用意した。
©創通・サンライズ
写真用にポーズをとっているが、実際は手を汚さぬよう100円ショップなどで手に入る、1回ごとに使い捨てできるビニール手袋を着用している。スプレー塗装自体初体験だったためコツを掴むのに一苦労したが、いかにも本格的なプラモ製作をしているという実感は相当なもの。まさに、子ども時代の自分にも体験させてあげたかったよ!
©創通・サンライズ
「サフ吹き」によって、しっかりと継ぎ目消しをした成果がよくわかる。まるで市販のフィギュアみたいなツルツル加減だ(多少失敗してるところもあるけど)。これで、塗装前の準備は完了。さぁ、次はいよいよ塗装だ。
遂にやってきた塗装の時。少年時代に夢見た「あの装備」を手に入れたオッサンは、さらなる高みを目指しガンプラの塗り分けに挑む。次回「宿命の塗装」編。俺は作り終えることができるか?
文:石井坂浩二郎
協力:株式会社バンダイホビー事業部
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