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2021.07.24

時計

始まりは1億越えのリシャール・ミルか。容姿端麗“ラグスケ”時計の誕生物語

オーシャンズでは、サファイアクリスタルケースのラグジュアリーモデルを“ラグスケ”と呼ぶことを提案する。
時代はラグスポからラグスケへ。その背景を探りつつ、見目麗しいこの新潮流をチェックしていこう。
 

“ラグスケ”ウォッチの歴史とその魅力

サファイアクリスタルケース、42.5mm径、手巻き。5519万円[予価]/ルイ・ヴィトン 0120-00-1854
[ルイ・ヴィトン/タンブール ムーン フライング トゥールビヨン ポワンソン・ド・ジュネーヴ ブルーサファイアクリスタル]
三日月の弧をイメージソースとする側面が凹状にくびれたケースに加え、裏蓋、LVのロゴをかたどったブリッジまでも同色のサファイアクリスタルで製作。ジュネーブシール取得のフライング トゥールビヨンを搭載し、メゾンのウォッチメイキングアトリエ「ラ・ファブッリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」の力量を示すモデル。
サファイアケースの増殖が止まらない。
時計専業ブランドはもちろん、その圧倒的な美しさは、非専業ハイブランドとの親和性が高く、急速拡大中だ。
1990年代にアラン・シルベスタインがサファイアケースを採用した記録があるが、裏蓋やラグが金属製でフルサファイアとはいかなかった。また、この素材はダイヤモンドに次ぐ高硬度ゆえ加工が難しく、限定仕様にとどまり、普及には至らなかったのだ。
世界限定50本。サファイアクリスタルケース、45mm幅、自動巻き。1961万3000円/ウブロ 03-5635-7055
[ウブロ/ビッグ・バン トゥールビヨン オートマティック オレンジサファイア]
サファイアクリスタルケースの技術進化をリードしてきたウブロ。これまでイエロー、ブルー、レッドなどのカラーを実現してきたが、今年は世界初となるオレンジカラーを完成させた。
香箱受けなど3つのブリッジもサファイアクリスタルで製作し、マイクロローター式の新開発自動巻きトゥールビヨンキャリバーをダイヤル側に搭載。容易に交換可能な独自のワンクリックシステムによるトランスペアレントストラップもオレンジで統一した。
現在のサファイアケースブームの発祥は、2012年にリシャール・ミルが発表した「RM056」と見ていい。複雑機構の搭載も相まって1億4700万円という価格も話題を呼んだ。
実はこのケースのサプライヤーは、以前アラン・シルベスタインを手掛けたのと同じステットラー社であることがわかっている。
世界限定100本。サファイアクリスタル×K18WGケース、縦37×横28.6mm、手巻き。942万7000円/シャネル 0120-525-519
[シャネル/ボーイフレンド スケルトン X-RAY]
レクタンギュラーの四隅を落とした八角形ケースを透明なサファイアクリスタルで。シャネルとして3番目の自社製ムーブメントにして、初のスケルトン仕様のキャリバー3.を搭載する。
透明な世界の中に、ADLC加工によってブラックに仕上げられたキャリバーの奥行きのある造形が、モデル名のとおり、X線に通したかのように浮かび上がる。
サファイア風防の加工に、ケースやパーツ製造用のCNCマシンが使われるようになり、その技術を発展させてケースに転用できないかというアイデアからスタート。
マシンやブレード、オイル、サファイア素材の見直しなどさまざまな改良を経て、実現にこぎ着けたようだ。技術革新に投下された資本回収のため、その後多くのブランドに広まったことは想像に難くない。
1億超に比べれば価格は下降傾向とはいえ、“ラグスケ”モデルは高価格帯に限られる。PtやK18以上にラグジュアリーな位置を当分はキープしそうだ。
 
※本文中における素材の略称:K18=18金、WG=ホワイトゴールド、Pt=プラチナ
柴田 充、髙村将司、オオサワ系、まつあみ 靖、戸叶庸之=文


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