時器放談 Vol.22
2020.12.17
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時器放談的「右京の腕時計」。あの“相棒”が相棒に選ぶ時計を明らかにせよ!

「時器放談」とは……

世代を問わず多くの人が夢中になっている人気刑事ドラマ『相棒』シリーズ。その主役、水谷 豊演じる杉下右京にも、名刺代わりの時計がある。

パソコンでパチパチ画像検索する安藤夏樹さん(右)と、見守る広田雅将さん(左)。今回も時計の話に華が咲く。

杉下右京は警視庁の窓際部署である「特命係」に所属する係長。ただひとりの相棒とともに、優れた推理力や洞察力によって事件を解決に導く人気刑事ドラマ『相棒』の主役である。

>1人目『男はつらいよ』車寅次郎編
>2人目『007』ジェームズ・ボンド前編後編
>3人目『ルパン三世』次元大介編

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時計との関係が深い『相棒』

安藤 4人目は人気刑事ドラマ『相棒』の主役、杉下右京にフィーチャー。彼の愛用時計を紐解いていきたいと思います。

広田 冒頭からごめんなさい! 実は僕、『相棒』を観たことがないんですよ。

安藤 えーー! なんと!! 広田さん、それはダメですよ、観てもらわないと。ちょうど2020年に放送20周年を迎えて「season19」がスタートしているんで、毎週水曜の21時はスケジュールをブロックしてください(笑)。

広田雅将●1974年、大阪府生まれ。腕時計専門誌「クロノス」編集長。腕時計ブランドや専門店で講演会なども行う業界のご意見番である。その知識の豊富さから、付いたあだ名は「ハカセ」。

広田 わかりました(笑)。でも、注目すべき人物は誰なんですか?

安藤 水谷 豊が演じる杉下右京です。まず、この『相棒』は時計と非常に親密な関係にある作品だと言って間違いありません。ドラマの中で時計が単なる小道具以上に、スポットライトが当てられるんです。

広田 それは興味深いですね。

安藤 例えば、「season5」の第14話「貢ぐ女」では、ランゲ&ゾーネのグランドコンプリケーションモデルが登場したり、「season12」の第6話はその回のタイトル自体が「右京の腕時計」だったりします。

広田 聞いてるだけで気になってきました。ちなみに、右京が愛用している時計はどんなのなんでしょうか?

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名物刑事が愛用するレクタンギュラーウォッチ

安藤 何本も確認されている杉下右京の愛用時計の中で、おそらく最も有名なのはフレデリック・コンスタントのカレでしょう。これは「右京の腕時計」の回でも明らかになります。

広田 へえー。レクタンギュラー(=角形時計)なんですね。

こちらは現在発売中のフレデリック・コンスタント「クラシック カレ オートマチック ハートビート」各日本限定150本モデル。縦38.7×横30.7mm、自動巻き。[左]SSケース、19万5000円、[右]SS(ローズゴールドプレート)ケース。22万5000円/ともにフレデリック・コンスタント 0570-03-1988

安藤 そうなんですよ。もちろんドラマの中では丸形の時計もしているんですが、杉下右京の愛用時計=角形時計というイメージが強い。

広田 なるほど。安藤さんの話を聞く限り、杉下右京という男は、かなりのひねくれ者で、個性的。しかし、圧倒的なインテリジェンスがある。そうしたキャラクターを時計にも投影させている。

安藤 まさにその通りです。彼の愛用時計としてジラール・ペルゴのヴィンテージ1945が登場する「season13」の第1話もぜひ押さえておきたい回です。フレデリック・コンスタントのカレとこの時計のイメージが強く、僕にとって杉下右京はレクタンギュラーウォッチなんです。

広田 なるほど。角形時計は知性を演出する、それを物語る事例のひとつというわけですね。

こちらは現在発売中のジラール・ペルゴ「ヴィンテージ 1945 XXL ラージデイト&ムーンフェイズ」。SSケース、縦36.1×横35.25mm、自動巻き。184万円/ジラール・ペルゴ(ソーウインド ジャパン 03-5211-1791)

安藤 おそらく、カルティエのタンクがそうしたイメージを作り上げたのではないかと思います。実際、右京さんは最新シリーズでは“真打ち”のカルティエを着用しています。

ただ市場には角形時計は絶対数として多くはありません。つまり、それを選ぼうと思ったときに選択肢としても少ない。だからこそ、カレが根強く売れ続けているのだと納得できます。

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杉下右京の相棒が愛用する高級時計にも注目を!

安藤 実はね、杉下の相棒役の腕時計にも注目すると面白いんです。

広田 というと?

安藤 反町隆史が演じる冠城 亘。彼は法務省からキャリア官僚として警視庁へと出向してきたんですが、実はパネライを着けているんですよ。

広田 え!? 反町隆史のパネライ、それってあれですよね……。

安藤夏樹●1975年、愛知県生まれ。ラグジュアリーマガジンの編集長を経て、現在はフリーに。「SIHH」や「バーゼルワールド」を毎年取材し、常に自分の買うべき時計を探す。口癖は「散財王に俺はなる!」。

安藤 ご名答。2018年の後半にパネライはアンバサダーとして反町隆史を起用しています。

広田 それはすごいですね。たまたまですかね?

安藤 たまたまじゃないでしょうね。個人のアンバサダー契約がドラマの世界にも入り込んできたのには驚きました。興味深い。

広田 パネライといえばシルヴェスター・スタローンが象徴するような、マッチョな男を彷彿させる時計です。反町隆史とは少しそのイメージから離れているような気もしますね。

安藤 パネライは彼が主演する映画『デイライト』をきっかけに広く認知されていったので、確かにそうしたマッチョなイメージがありますね。ただ近年はそうしたところから脱却を初めています。

広田 確かに。もっと知的で強い男性像を訴求していますね。

安藤 そのイメージで言えば、冠城 亘というキャラクターはハマっていると言ってもいいかもしれません。

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「映画と腕時計の親愛関係」をじっくり楽しむために

安藤 『相棒』に限らず、小物という視点で作品を見ると改めてそれが単なる小道具ではないということを実感できると思います。

広田 細部までよく練り込まれた作品は、本当にどこを見ても面白い。時計で言うと、映画『スピード』が代表するような時間をテーマにした作品で登場する時計もあれば、登場人物のキャラクターを作り上げるための時計もある。

安藤 あとは、映画で神格化された時計というのもありますね。『ゴーストバスターズ』で登場するセイコーのボイスノートや、『エイリアン2』で着用されたセイコーのジウジアーロ、そして2回目でも記事でも触れた『007』でジェームズ・ボンドが愛用したセイコーデジボーグなど。

広田 そういう視点で、過去の名作映画を見直すのもいいですね。

安藤 ただ、悩ましいのは時計ばっかり気にしていると、ストーリーまったく頭に入ってこなくなる(笑)。「アレ!? さっきあの人が着けていた時計ってなんだろう」って、それしか気にしなくなってきますから。

広田 それは、あるあるですね(笑)。「映画と腕時計の親愛関係」をじっくり楽しむためには、一時停止や巻き戻しはマストかもしれませんね。

安藤 そんなわけで、今すぐにでも、月額もわずかなNetflixやHulu、『相棒』ならTELASAに入会して、じっくりと鑑賞してほしいと思うわけです。

広田 そうですね……って、あれ!? なんだか違う話になってません(笑)?

 

「時器放談」とは……
マスターピースとされる名作時計の数々。毎回、こだわりの1本を厳選し、そのスゴさを腕時計界の2人の論客、広田雅将と安藤夏樹が言いたい放題、言葉で分解する。上に戻る

鳥居健次郎=写真 安部 毅=文

※本文中における素材の略称:SS=ステンレススチール

# フレデリック・コンスタント# 時器放談# 杉下右京# 相棒
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