文字盤をオフセットし、左右シンメトリーに輪列が並ぶ。この特異なレイアウトをむき出しにした時計が「トラディション」だ。
だがそれもまるで地層のように堆積した過去のアーカイブに成り立つ。
モチーフは1796年の1本針の懐中時計「スースクリプション」であり、同系「モントレ・ア・タクト」を経て、2005年の誕生にいたる。
だが開発を指揮したニコラス・G・ハイエックは「過去を忘れろ」と指示し、その成果を「私たちは空前絶後の冒険をしているね」と称賛したという。
本作はレトログラード式の秒針を装備。伝統は決して過去のコピーでないことを示している。
※本文中における素材の略称:K18=18金、WG=ホワイトゴールド
鈴木泰之=写真 柴田 充=文