ミリタリーウォッチ ブートキャンプ Vol.3
2020.09.02
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ツウなヴィンテージミリタリー時計のブランド。ブローバ、エテルナ……次は?

「ミリタリーウォッチ ブートキャンプ」とは……

そもそもの話になるが、ヴィンテージウォッチの相場は、時計の良し悪しだけで成り立つものでない。

価格はあくまで需要と供給のバランスから決まるため、ときにブランドが持つ人気や知名度が、市場での評価に繋がることも多い。

有無を言わさない存在感を放つ、ブローバの「タイプA-15」。

その一方で、有名なブランドでなくても評価されているモデルも多くある。

そんな、ミリタリーウォッチ界の“知る人ぞ知る名品”を紹介しよう。

 

■ブローバ アメリカ陸軍航空軍 タイプA-15

ブローバの「タイプA-15」は、ほぼ市場に出回ることがない “幻のミリタリーウォッチ”の1本に数えられる。

「ブローバ アメリカ陸軍航空軍 タイプA-15」1940年代、SSケース、32.5mm径、手巻き。150万円前後(実勢価格)/キュリオスキュリオ 03-6712-6933

オリジナルは約500本製造され、1940年代初頭から中頃にかけて、アメリカ陸軍航空軍(USAAF)の航空技術サービス司令部をはじめとして、さまざまな機関でテストが行われたのだが、正式採用には至らなかった。

このような事情から流通が極端に少ないことに加え、時間経過を瞬時に読み取る特殊機能を実現した唯一無二のデザインを持ち合わせていることが、プレミア化の主な理由だ。

威厳に満ち溢れた3つのリュウズと「A-15」のモデル名が刻まれた裏蓋のマーキング。

採用した“リムアキュムレーター”というシステムは、2時位置と4時位置のリュウズを回すことで、2つの回転ベゼルを操作し、分・時の経過をそれぞれ読み取ることができる。

復刻モデルも人気らしいが、貴重なオリジナルが放つ存在感は、やはり別格だ。

 

■アウリコスト フランス空軍 タイプ20

フランス空軍用のクロノグラフ「タイプ20」は、ブレゲ、ヴィクサ、エイラン、そしてアウリコストの4社が納入していたことが確認されている。

アウリコストが手掛けた「タイプ20」は、メッキケース×マットブラックダイヤルと、ステンレススチールケース×ブラックミラーダイヤルの2種類があり、こちらで紹介する後者のモデルは、わずか100~200本ほどの製造数だと言われている。

「アウリコスト フランス空軍 タイプ20」 1960年代、SSケース、38mm径、手巻き。250万円前後(実勢価格)/キュリオスキュリオ 03-6712-6933

なお、この個体は、裏蓋に「CEV(フランス空軍飛行テストセンター支給)」の刻印が入ることから、通常のステンレスケース・モデルよりもさらに稀少性が高い。

厳格な品質基準を設けた軍用のクロノグラフだけあって、ムーブメントの性能は頭ひとつ抜けている。

レマニア製の「Cal.15TL」をベースムーブメントにフライバック機能を追加することで完成した「Cal.2040」は、耐震装置まで付くスペックが自慢。

ヴィンテージならではの醍醐味であるミラー仕上げの文字盤。

稀少性、機能性ともにトップクラスだが、最大の魅力は、フランスブランドらしい“エスプリを感じさせるスタイリング”にあるとも言えないか。

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■ハミルトン アメリカ空軍 FAPD 5101

一見すると、アメリカ陸軍用の「GG-W-113」や「MIL-3818B」でも見受けられるデザインだが、こちらの「FAPD 5101」は、1970年9月のみ、空軍に支給されたというレアモデルなのだ。

「ハミルトン アメリカ空軍 FAPD 5101」 1970年代支給、SSケース、36mm径、手巻き。30万円前後(実勢価格)/キュリオスキュリオ 03-6712-6933

ほかのモデルとの決定的な違いは、“ケースの仕様”にある。

イギリス軍に支給されたパイロット用ウォッチと同型のケースを採用しつつ、そこにアメリカ軍の基準スペックであるマット仕上げを施している。

マット仕上げのステンレスゆえケースバックの雰囲気も独特。

飽きのこないテイストと稀少性を兼ね備えたハミルトンのレアピース。程良い36mm径のケースサイズであることもお見逃しなく。

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■エクセルシオパーク 航空自衛隊 クロノグラフ

今はなきエクセルシオパークは、スイスのサン・ティミエで創業したクロノグラフ専門メーカー。

ゼニス、ギャレット、ジラール・ペルゴといった名門ブランドにムーブメントを供給していた実力派として、目の肥えた愛好家たちから熱い視線が注がれている。

「エクセルシオパーク 航空自衛隊 クロノグラフ」 1950年代、SSケース、37mm径、手巻き。100万円前後(実勢価格)/キュリオスキュリオ 03-6712-6933

1950年代に航空自衛隊が採用した伝説的なクロノグラフは、エクセルシオパークの魅力を余すことなく伝える傑作。

エクセルシオパーク製のクロノグラフ専用ムーブメントは、高級機でよく見られる特徴的な機構を採用しており、ダイヤルの出来も、ムーブメントに勝るとも劣らない。この当時の主流であった45分の積算計を3時位置、スモールセコンドを9時位置に配した文字盤のレイアウトは品格が感じられる。

もともとブラックミラーの文字盤がここまで均一にブラウン化するケースは極めて稀。

この個体に関して言えば、経年変化による“トロピカルダイヤル”の評価が重なるため、「最高クラスの稀少性」だと言っても過言ではない。

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■エテルナ チェコスロバキア空軍 ラージクッションケース

1940年代のチェコスロバキア空軍が採用していた通称“ラージクッションケース”。

ロンジン、レマニア、エテルナの3社が納入していたことからいくつかのバリエーションがあり、その中から自分好みのテイストを探すことができる。

「エテルナ チェコスロバキア空軍 ラージクッションケース」 1940年代、ケース、38mm径、手巻き。50万円前後(実勢価格)/キュリオスキュリオ 03-6712-6933

エボーシュメーカーとして1851年に創業したエテルナは、1938年に世界初の自動巻き式腕時計の発表、1948年の画期的なベアリングシステムを搭載した自動巻きムーブメント「エテルナマティック」の開発などで一世を風靡した名門ブランド。

エテルナ製のラージクッションケースは、スモールセコンドとセンターセコンドの2種類がある。

どちらも1940年代の時計だが、とりわけセンターセコンドのモデルは洗練されたデザインゆえ、古びない佇まいに見える。

38mm径の薄型ケースであることも注目すべきポイントに挙がる。

よく目を凝らすと、左上のラグに「クロスソード」の刻印を確認することができる。

ちなみに民生用もあるが、軍用のほうが人気が高い。マーキングはいくつかのパターンがあり、ラグに刻まれたチェコスロバキア空軍の象徴である「クロスソード」のマークは、軍用モデルであることを示す。

腕時計の発展に大きく貢献したと言われるミリタリーウォッチの文化は、知れば知るほど奥深い。

知識や経験を得る度に目の前の景色が変わり、時計の楽しさや所有する喜びが深まることは請け合いだ。

 

[取材協力]
キュリオスキュリオ
住所:東京都港区南青山4-26-7 +8ビル 302
電話:03-6712-6933
営業:15:00~20:00 月・火曜定休
https://curious-curio.jp

「ミリタリーウォッチ ブートキャンプ」とは……
軍用を出自とするミリタリーウォッチは、国や時代、用途などによって驚くほど奥が深い。そんな一朝一夕には語れない世界に飛び込む“新兵”へ向けた短期集中訓練(ブートキャンプ)。
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※本文中における素材の略称:SS=ステンレススチール

戸叶庸之=編集・文

# ヴィンテージ# ミリタリーウォッチ# 腕時計
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