Watchの群像劇 Vol.24
2020.08.24
WATCH

唯一無二のセラミックスウォッチ。シャネル「J12」に託す変わらない想い

「腕時計と男の物語」とは……

セラミックスの輝きに託した“変わりゆく同じもの”

ねぇ、と何げなく出かかった妻へのひと言を思わず呑み込んだ。

その背中がまるで見ず知らずの他人のように映ったからだ。

不測の事態からオフィスに通わなくなり、今もなおテレワークが続いている。リビングの片隅を仕事用に陣取った。とはいえ仕上げたデザインをほかのセクションと共有するにも、社内のようにスムーズには進まない。プライベートとのメリハリがつかず、食卓についても頭から仕事が離れなかった。

堆積していくストレスに、家族への慈しみを見失っていたのかもしれない。皮肉にも24時間を一緒に過ごすようになってその距離は離れていった。いつしか家の中は、かつての閉ざされた街以上にひっそりと静まり返った。

そんな孤独感にラジオから流れる「ドック・オブ・ザ・ベイ」が静かに沁み入った。ブラックミュージックは、R&Bからソウルへと時代とともに変わりながらも信念を守り続けることから、“Changing Same(変わりゆく同じもの)”と讃えられる。はたして僕らは今後何を守っていけばいいのだろう。

先の見えない不安に抗うように時を刻み続けていたのはシャネルの名作「J12」だ。
腕時計64万円/シャネル 0120-525-519、シャツ2万5000円/ジャンネット(トヨダトレーディング プレスルーム 03-5350-5567)

先の見えない不安に抗うように時を刻み続けていたのはシャネルの名作「J12」だ。20年前、当時付き合っていた妻との結婚が決まり、シャネルのマリッジリングを購入した。ふたりだけでスタートした生活にはまもなく新たな家族が加わり、小さな幸せを積み重ねてきた僕らの生活にそのリングは静かに寄り添い続けた。

この黒い「J12」は今年、自ら購入したもの。これまでいわゆる高級時計には縁のない人生だったが、それを買うならシャネルと心に決めていた。僕にとって特別なブランドだったことは言うまでもない。

  「J12」もその誕生から今年で20周年を迎え、昨年モデルチェンジした。しかし驚いたのは、最新技術を注いだムーブメントの刷新をはじめ、ほぼすべてのデザインを見直したにもかかわらず、見た目の印象をいっさい変えなかったことだ。それはまさに熟成進化であり、“Changing Same”が息づいている。

気付くと曲は「この素晴らしき世界」に変わっていた。そうだ、今度は妻に「J12」を贈ろう。僕の黒と彼女の白。たとえ僕らを取り巻く環境は少しずつ変わってきても、常に同じ方向を向いていられるように。でも今さらペアウォッチなんて嫌がるかな。

「ちょっといいかな」「どうしたの?」振り返ろうとする妻の姿は、かつてと変わりなく見えた。

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時を経て、その顔はさらに風格と革新性を増す

CHANEL シャネル/J12
セラミックス×SSケース、38mm径、自動巻き。64万円/シャネル 0120-525-519

CHANEL
シャネル/J12

シャネルはセラミックスの可能性にいち早く注目し、2000年に登場した「J12」は機能性を唯一無二の個性として昇華。これまで多彩なバリエーションを発表してきたが、昨年に誕生20年目を迎え、さらに次世代へと進化を遂げた。

ムーブメントの刷新をはじめ、改良は70%以上に及ぶが、デザインの基本は変わらない。それは既に誕生した時点で完成の域に達している証しであり、揺らがぬあり方はブランドの顔と呼ぶに相応しいのだ。

 

「腕時計と男の物語」とは……
男には愛用の腕時計がある。最高の相棒として、その腕時計は男と同じ時間を刻んできた。楽しいときも、つらいときも、いかなるときも、だ。そんな男と腕時計が紡ぐ、とっておきの物語をここで。
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川田有二=写真 菊池陽之介、石川英治=スタイリング 柴田 充=文

# Watchの群像劇# シャネル# セラミックス# 腕時計
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