マスターピースの微差に大歓喜! 新作腕時計を4つのキーワードで解析
毎年スイスで開催される時計見本市が今年は軒並み延期・中止に。そんななかオーシャンズが収集した情報から新作のトレンドをピックアップ。4つのキーワードとともに読み解く。
そこには各社の微妙で繊細なブラシュアップがたくさん詰まっていた。
[Keyword 1] 最新ムーブメント

伝説的手巻きキャリバーを搭載したSS版
OMEGA
オメガ/スピードマスター ムーンウォッチ 321 ステンレススティール
世界中にファンを持つ“ムーンウォッチ”こと「スピードマスター」。月面着陸50周年のアニバーサリーだった昨年発表されたのが、伝説的手巻きキャリバー321の復活だ。
復活第1弾はPtケースのモデルだったが、今年はついにSSケースを纏っての登場。ディテールや機能の違いによってさまざまな顔を持つ「スピードマスター」だが、本作は、よりオリジナルの仕様に近いものとなり、まさにコレクター垂涎の出来栄え。
[Keyword 2]素材使い

神秘的なダイヤルに浮かぶ12のキューブ
LOUIS VUITTON
ルイ・ヴィトン/エスカル スピン・タイム メテオライト
ダイヤルに設置された12個のキューブが回転し、時を告げるユニークピース。今年は外装とダイヤルにシリーズ初となる素材を投入した。ケースにはチタンを、ベゼルにはK18PGを、そしてダイヤルにはアフリカのナミビアで発見されたギベオン隕石を用いる。
キューブにはルイ・ヴィトンの著名なラゲージに採用されるモチーフが刻まれるなど、時間と旅を綿密に結び付ける手法にもメゾンのエッセンスが感じ取れる。

ブランドを象徴する発光塗料で飾った新素材
PANERAI
パネライ/ルミノール マリーナ フィブラテック-44mm
イタリア海軍の要請で作られた頑強な時計をルーツに持つパネライは、海中のミッションに欠かせない発光塗料ラジオミールを独自開発するなど、技術革新にも優れる。そうした先進性を素材使いにも見せる最新作。
新素材フィブラテックは、玄武岩と炭素素材を融合し、軽さと強度を実現したもの。「ルミノール」誕生70周年に合わせて、発光塗料スーパールミノバで彩るセンスもファンにはたまらない。
[Keyword 3]サイズダウン

1980年代に一世を風靡したマリンウォッチの現代版
CORUM
コルム/アドミラル レジェンド 38mm
ヨットライフ周辺の瀟酒な世界観を、国際海洋信号旗のインデックスやネイビーとゴールドのケースで表現した「アドミラル」が38mmサイズに小型化。初めてこのデザインを採用した1983年モデルに、デザインとサイズともに近づけた格好だ。
’80年代に一世を風靡した人気作を、現代の技術でブラッシュアップ。ガンブルーと呼ばれる深い海の青色をPVDで再現したケースにアリゲーターストラップを備えたエレガントな佇まい。

スリムなのに長く動く、ドレスの正統派
BLANCPAIN
ブランパン/ヴィルレ ウルトラスリム
「ヴィルレ」は、ブランパン発祥の地をその名に冠したクラシカルなコレクション。今年リニューアルされた本作はスリムな38mmケースを採用する。特徴である2段ベゼルや流麗なリーフ針、特徴的なローマ数字など気品ある佇まいはそのまま。
オーパリンダイヤルに輝くインデックスは、丹念に手作業で植字されたもの。デイト表示のバランスもブランドの美的感覚の賜物だ。100時間のパワーリザーブを持つムーブメントは、薄さのなかにも高い技術を感じさせる。
[Keyword 4]仕上げの変更

多面体ウォッチに施された手の込んだ仕上げ
BVLGARI
ブルガリ/オクト フィニッシモ S
多くのファセットを持ちながら薄型化を成功させたブルガリのアイコンウォッチ「オクト フィニッシモ」。SSケースを纏った最新モデルは、特徴的なファセットのそれぞれを、ポリッシュ(鏡面)とサテン(筋目)で仕上げ分けている。
シンプルなアイデアながらも、手間のかかる工程によって、見事にその造形美を際立たせているのだ。加えて薄型にもかかわらず、スクリューダウン式リュウズを初採用することで10気圧防水性能も獲得。

アール・デコ調の名作に繊細な仕上げのダイヤルが登場
FRANCK MULLER
フランク ミュラー/ロングアイランド レリーフ
1920年代に栄えたアール・デコ調を現代に再現するレクタンギュラーケースの「ロングアイランド」の新作は、そのダイヤル装飾に注目したい。ギョーシェ彫りが施されたダイヤルの裏からインデックスの数字を型押しする、レリーフという技法を用いて浮き彫りの仕上げに。インデックスの光沢感とギョーシェ彫りの繊細な柄が絶妙なコントラストを生み、白とゴールドからなるミニマルな世界を盛り上げている。

独自の表面硬化技術がもたらす漆黒のチタン
CITIZEN
シチズン/エコ・ドライブ ワン
シチズンが他社に先駆けて進化を遂げているもののひとつが、チタニウムの扱いだ。世界最薄となる1㎜厚の光発電エコ・ドライブムーブメントを搭載するモデルに採用するケースが、シチズン独自の表面硬化技術デュラテクトDLCを纏ったスーパーチタニウム。
軽量かつ耐摩耗性に優れ、その表面は艶感のあるブラックが特徴。ダイヤル外周や針のゴールドと相まってラグジュアリーな顔立ちに。
※本文中における素材の略称:SS=ステンレススチール、K18=18金、PG=ピンクゴールド、Pt=プラチナ
柴田 充、髙村将司、増山直樹=文