映画『ジョーカー』が人気を博した。管理された現代社会では狂気が共感を呼ぶのか。見方を変えれば、そもそも狂気とは常識に縛られず自由な精神に、創造力を解放することだ。時計にもそんなジョーカーは潜んでいる。一度虜になればその魅力から逃れることはできない。
KONSTANTIN CHAYKIN
コンスタンチン・チャイキン／ジョーカー
世界限定99本。SSケース、42mm径、自動巻き。360万円／アンドロス 03-6450-7068見るたびに異なる表情は、その瞬間の気分も刻む独立時計師コンスタンチン・チャイキンが手掛けた「ジョーカー」は、モデル名そのままに、文字盤にはあの不敵な表情が浮かぶ。しかも時分によって目を表す左右のカウンターは目線を変え、さらにムーンフェイズの口元も月の位置で印象が異なる。
見るたびにまったく違うその表情は、自分自身の気分を映し出し、諌めたり、励ましてくれたりするだろう。ジョーカーはカードゲームでは奇抜な手として、たとえ劣勢でも一発逆転を狙える切り札でもある。そんな不屈な精神を常に腕元に秘めていたい。
LOUIS VUITTON
ルイ・ヴィトン／タンブール スピン・タイム エアー
K18WGケース、42.5mm径、自動巻き。597万円［予価］／ルイ・ヴィトン 0120-00-185410年の時に磨かれ、独創的な発想はより洗練を極める時針の代わりに12個のキューブで時を示し、中央の針で分を指す。ジャンピングアワーの進化形でもある独自の複雑機構スピンタイムが開発され、特許を取得してから10年を経て、さらに進化を遂げた。
機構が収まる中心のモチーフに支えられたキューブが宙に浮かび上がり、60分ごとに隣り合った2つがリレー式に瞬時に回転する。奇しくもブランド名が12進法と同じ12文字であり、これも独自の表示をより個性的に演出する。唯一無二のユニークな発想はこんな偶然さえも味方にするルイ・ヴィトンの時計の魅力は
こちらでも。
ZENITH
ゼニス／デファイ インベンター
チタンケース、44mm径、自動巻き。204万円／ゼニス 03-3575-58613世紀以上の歴史を刻む時計の針をさらに前に進めたエル・プリメロの伝統は、決して進化を止めないという精神なのかもしれない。通常は約30の部品で構成する脱進機をわずか1枚の“ゼニスオシレーター”なるパーツに置き換え、振動数も毎時12万9600振動を達成した。これは一昨年に発表され、10本限定で発売された「デファイ ラボ」 の試作段階を経て、市販にいたる。その先進性に相応しく、ベゼルにはチタンの3倍軽いアエロナイト素材を採用する。その動きは3世紀以上の時計の歴史を前進させた。
HUBLOT
ウブロ／ビッグ・バン ウニコ キングゴールド レインボー
K18キングゴールドケース、45mm幅、自動巻き。970万円／ウブロ 03-5635-7055レインボーが象徴するのは時代を拓く先進性であるウブロは、異素材とアイデアの融合である“アート オブ フュージョン”をコンセプトに掲げる。自社製キャリバー、ウニコを搭載した人気モデルにベゼルにバゲットカットのカラーストーンを48個、マットブラックスケルトンの文字盤には212個のカラーストーンをちりばめ、さらにレインボーカラーをストラップまで全身にあしらう。
常に時代を突き動かす先進性を追求するブランドの精神に、多様性や平和を象徴する鮮やかなカラーリングがよく似合うのだ。
GIRARD-PERREGAUX
ジラール・ペルゴ／コスモス
チタンケース、47mm径、手巻き。3802万円／ソーウインド ジャパン 03-5211-1791天球と地球が繰り広げる、腕元のコスモス“アース・トゥ・スカイ”のテーマの下、文字盤の上下には、時分を示すインダイヤルと、ブラックチタン製のブリッジの下に複雑機構のトゥールビヨンを収める。また左右には、星座を描いた天球と地球をシンメトリーに置く。
天球は占星術の12星座を表示し、23時間56分4秒で1回転する一方、地球は赤道近くの目盛りでGMTの読み取りとデイ＆ナイト表示を兼ねる。それは地球から見た宇宙と、宇宙空間から見た地球という2つの視座を備えるのだ。
※本文中における素材の略称は以下のとおり。SS＝ステンレススチール、K18＝18金、WG＝ホワイトゴールド
柴田 充、髙村将司、増山直樹、渋谷康人＝文
