2019.10.09
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正統派ウォッチブランド「オリス」が掲げる環境保全という使命

オリスは115年の歴史を持つスイスのウォッチブランドである。その腕時計は機能性に優れ、タイムレスなデザインを備えている。そんな製品作りの哲学のうえに、もうひとつの揺るぎない哲学がある。それは、今ある地球環境を守り抜こうという明確な意志だ。

オリスとは?
1904年、スイス北西部の美しい町、ヘルシュタインにて設立。’38年にカレンダー機能を搭載したパイロットウォッチを、’65年には100m防水のダイバーズウォッチを開発するなど、スイスを代表するウォッチブランドとして実績を重ねる。’80年代以降は機械式腕時計の製作に特化。現在も創業の地であるヘルシュタインを拠点とし、数少ない独立系ブランドとしてウォッチファンに愛され続けている。

「僕らの世代こそが“今”を変えなければならない」

共同経営責任者 ロルフ・スチューダー 氏 2006年、リージョンマネージャーとしてオリスに入社。副社長を経て、’16年にオリスグループの共同経営責任者に就任する。
共同経営責任者 ロルフ・スチューダー 氏 1972年、スイス・ルツェルン出身。フリブール大学およびモンペリエ大学で法律を学び、弁護士資格を取得。’99年にコカ・コーラ ヴィバレッジに入社し、マーケティングとセールスを担当。2006年、リージョンマネージャーとしてオリスに入社。副社長を経て、’16年にオリスグループの共同経営責任者に就任する。現在はマーケティングとセールスを統括。’50〜’60年代のジャズを愛し、ランやセーリング、スキーを嗜むスポーツマン。10歳の娘と8歳の息子を持つ父親でもある。

去る6月22日に日本初の路面店「オリス銀座ブティック」をオープンしたオリス。そのオープンに合わせて来日したのが、若き経営責任者ロルフ・スチューダー氏だ。

「銀座は“昔ながらの時計店の空気”がある街。日本で店舗を構えるなら銀座しかないと思っていました。ただし威圧的な感じのない、気軽で、リラックスできる店を作りたかったんです」。

店内右手には代表的なモデルがケースに収まることなくディスプレイされている。つまりその腕時計は、誰でも気兼ねなく手に取ることができる。

「時計作りに関して私たちは生まじめです。でも、まじめぶって時計を身に着けることに意味はありません。それよりも実際に時計に触り、笑顔が生まれることのほうが大事だと思うんです」。

オリスの歴史は正統派のウォッチブランドそのものだ。1904年創業の老舗。懐中時計の製作に始まり、’38年には大型のリュウズを持つパイロットウォッチを開発し、腕時計作りの地歩を固めた。またクオーツショック(※1)に相対したという点も、ある意味スイスウォッチの典型的な歴史をたどっている。

「クオーツショック後の’70〜’80年代にかけて、現会長のウルリッヒ・ヘルツォークはたびたび日本を訪れました。彼はそのとき、興味深い現象に気付いたのです。クオーツの発祥である日本において、逆に機械式時計を求める声が多く上がっていたことに」。

当時社長を務めていたヘルツォーク氏は勇気ある決断を下す。「クオーツ時計しか売れない」と言われていたなか、あえて機械式時計のみを作るブランドへとシフトしたのである。

「我々が独立系ブランド(※2)であったことも大きな要因です。目先の利益だけにとらわれず長いスパンで経営を考えることができる。そのときの決断がようやく今、実を結んでいるのですから」。

製品に対する愛情と情熱。腕時計がもたらす喜びを伝えること。これらに加えて、今のウォッチブランドにはもうひとつの大きな使命があるという。

「それは年々深刻化する環境問題です。機械式腕時計という製品は、その問題提起に相応しい属性があります。使い捨てではない、人生という長い時間をともに過ごす製品だからです」。

“使い捨て文化”による環境問題といえば、今はマイクロプラスチックによる海洋汚染がその筆頭に挙がる。

「我々はドイツの企業とともに、プラスチックゴミを回収しバイオベースの製品に変換するプラットフォームに取り組んでいます。でも同じくらい重要なのが、今大変な問題が起きていると“気付いてもらうこと”なんです」。

ひとつの例が「オリス クリーンオーシャン」だ。その裏蓋は、再生プラスチックを圧縮して作ったプレートなのである。

「高級な腕時計を購入するような社会的地位のある人たちに、何かに気付くきっかけを与えたい。私たちを含むほんの2、3世代という短い時間で、地球環境は急速に悪化してしまいました。だからこそ僕らが“今”を変えていかなければならないのです」。


※1 クオーツショック
1967年、規則的に振動する「水晶振動子」を用いた、誤差の少ないクオーツ方式の腕時計をセイコーが発売。その影響で機械式腕時計を製作していた多くのメーカーの売り上げが減少した。

※2 独立系ブランド
海外の高級腕ウォッチブランドは現在、スウォッチ、リシュモン、LVMHといった巨大グループに属している場合が多い。そのようなグループに属していないブランドが“独立系”と呼ばれている。

加瀬友重=編集・文

# オリス# ブランド知り# 腕時計
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