時計なら心臓部こそ屈強であれ! 進化を続けるムーブメントの潜在能力
どれだけ外装を強固に固めたとしても、内なるムーブメントが脆弱では意味がない。常に高い精度を維持し、長く動き続けるには、素材や設計など多くの技術開発を要する。
それが逆境にも負けない強さにつながる。
SINN
ジン/T1

ムーブメントを湿気や過酷な環境下から守るテクロノジー
ムーブメントに湿気は大敵であり、精度に影響を及ぼすだけでなく、錆の原因になる。これを防ぐため、本作では独自のArドライテクノロジーを導入。特殊乾燥剤を充填したドライカプセルで水分を吸収するとともに、ケース内にプロテクトガスを充填させ、空気による放電腐食をも防ぐ。
さらに自社開発した潤滑オイルを採用することで、マイナス45度からプラス80度までという極限の環境下でも正確に動作(写真)。先端技術を得意とするジンらしい1本。
OMEGA
オメガ/シーマスター ダイバー300M マスター
クロノメーター チタン タンタリウム

125年の時を経て、信頼のバトンは赤いカードに
今年は後にブランド名となる19 ライン“オメガ” キャリバーの誕生から125周年になる。当時、圧倒的な精度を誇ったこのムーブメントは、ブランドを象徴する存在となり、その精神は2015年に導入したマスター クロノメーターにも貫かれる。
これはスイス連邦計量・認定局による品質認定で、高耐磁性をはじめ、防水性や姿勢差、パワーリザーブ機能の精度など8つの試験と検査を行う。付与される赤いカードは絶対的な品質の証しだ。本作はそれに準拠する高性能ダイバーズ。独自のK18セドナゴールドが品の良さを醸し出す。
ORIS
オリス/ビッグクラウン プロパイロット キャリバー114

練度を高めた自社製の10日間パワーリザーブ
ケースバックから覗く自社製キャリバー114は、大型のシングルバレルがその存在感を際立たせ、まるで懐中時計のそれを思わせる。このムーブメントは2014年に発表されたキャリバー110をベースに、これまで日付、セカンドタイムゾーン、月表示付きビジネスカレンダーと付加機能に進化を遂げてきた。
その第4弾であるキャリバー114は、10日間の超ロングパワーリザーブとパワーリザーブインジケーターに加え、30分単位で調整できる半時刻調整機能付き24時間表示セカンドタイムゾーンを装備。
CARTIER
カルティエ/サントス デュモン

世界初の紳士用腕時計の風格がさらに増す
飛行機の操縦中でも時刻が確認できる機能性と、エレガントなスタイルを融合させた世界初の実用紳士腕時計「サントス ドゥ カルティエ」が、より現代的に進化を遂げた。特徴のひとつが、新開発のクオーツムーブメントを搭載している点。
エネルギー消費を減らすための省エネ設計をはじめ、ムーブメントサイズを再検討し、より高性能の電池を採用することで、従来の2倍のパワーを実現した。約6年間の連続作動能力は、バッテリー交換のわずらわしさを抑えただけでなく、クオーツ時計ならではの薄いケースと心地良い装着感を実現。まさに飛行家サントスの意思を受け継ぐ。
TAG HEUER
タグ・ホイヤー/オータヴィア アイソグラフ

先進性のシンボルに相応しい革新の脱進機
1933年にダッシュボード計器として誕生した「オータヴィア」。それ以来、ブランドの歴史とともに歩んできたこのコレクションに、今年、独自の脱進機アイソグラフを導入した新モデルが登場。
アイソグラフとは、カーボンコンポジット製ヒゲゼンマイ(写真)とアルミ合金のテンワを組み合わせた機構で、より安定した動作を実現する。ヒゲゼンマイは調速を司り、これに軽量かつ低密度のカーボンコンポジットを採用することで、重力や衝撃の影響を抑えるのだ。それに加え、最適な温度特性と正しく振動させる空力弾性も得ている。
※本文中における素材の略称:K18=18金、PG=ピンクゴールド、SS=ステンレススチール
星 武志(エストレジャス)=写真 石川英治(Table Rock. Studio)=スタイリング 柴田 充=文