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2019.01.01

時計

化学の力で時計はどんどん凄くなる。その証拠となる5本をピック!

機械式時計というと、ゼンマイと歯車からなる古色蒼然とした技術に思われがちだが、かつては数学、物理、天文学などと並ぶ最先端の英知だった。そして今、最新鋭のカガクとツナガルことで新たな可能性の扉を開く。

上●RADO ラドー
ダイヤマスター グランド セコンド
メタリックな輝きにパイオニアの自負が漂う

日進月歩の進化を遂げる時計技術でも特に目覚ましいのが、素材開発の分野だ。その中でも広く普及し、今も進化を続けているのがハイテクセラミックスであり、この分野のパイオニアがラドー。
プラズマ ハイテクセラミックスは、プラズマ炉で加熱した2万℃の活性化ガスにより、ホワイトセラミックスにメタリックな輝きをもたらす。通常のハイテクセラミックスに比べると、25%の軽量化と高い耐傷性、スチールの最大5倍の硬さに、低アレルギー性も併せ持つ。プラズマ ハイテクセラミックスケース、43mm径、自動巻き。29万円/スウォッチ グループ ジャパン 03-6254-7330

中●CVSTOS クストス
チャレンジ ジェットライナーⅡ P-S オートマティック
独創技術がもたらす磁力を味方にした軽やかさ

金属部品で構成される、機械式ムーブメントの精度を妨げる大きな原因のひとつが“磁力”だ。ところがこのモデルは、あえてその天敵を味方に取り入れた。スモールセコンドを担う、大型タービンの駆動構造に、一般的な抑えバネに代わって、磁力を応用したのだ。
バネの磨耗による秒針の針飛びを制御すべく、磁力を用いることでパーツに掛かる負担を軽減。クストスらしい、独創的な発想が冴えわたる。チタンケース、縦53.7×横41mm、自動巻き。118万円/フランク ミュラー ウォッチランド東京 03-3549-1949

下●ZENITH ゼニス
デファイ エル・プリメロ21
エル・プリメロの進化を融合した驚異の1/100秒計時

ゼニスのコアコンピタンスが、ハイビートクロノグラフムーブメントの「エル・プリメロ」であることは周知のとおり。これが2019年に50周年を迎え、第3世代へとシフト。時刻表示とクロノグラフのそれぞれに独立した香箱と伝達、脱進機を備え、前者は従来の3万6000振動に対し、後者はその10倍の36万振動を備える。これにより、クロノグラフは1/100秒まで計時を実現し、センター針は1秒間で1周する。技術を継承しつつ、さらに進化を遂げる。伝統をつなげるブランドの意思が伝わる。チタンケース、44mm径、自動巻き。128万円/ゼニス 03-5524-6420
 

PANERAI パネライ
ロ シェンツィアート ルミノール 1950 トゥールビヨン GMT チタニオ-47mm
世界初の3Dプリンター技術が生んだブランドの顔

チタンケース、47mm幅、手巻き。1572万円/オフィチーネ パネライ 0120-18-7110
先進素材の開発は、加工成型の技術進化にも大きく関わってくる。近年注目を集めるのが3Dプリンターであり、本作はそれを時計界で初採用。低アレルギー性や耐腐蝕性、さらにはチタンの軽量性を追求するために、直接金属レーザー焼結方式によってケースを中空構造化した。
これは粉末状のチタニウムを使用したファイバー光学レーザーによって、3Dのオブジェクト層を形成。厚さわずか0.02mmの層を重ね、固体化することで、複雑な空洞の形成に成功したのである。ブランドを象徴するアイコニックなケースは、従来の100m防水性能と堅牢性を損なうことなく、圧倒的な軽量化を実現した。
 

AUDEMARS PIGUET オーデマ ピゲ
ロイヤル オーク・ダブル バランスホイール オープンワーク
安定した精度と表裏で動きが楽しめる2層テンプ

K18PGケース、37mm径、自動巻き。715万円/オーデマ ピゲ 03-6830-0000
時計の精度を司る調速脱進機において、テンプの果たす役割は大きい。その回転を安定させる=等時性を高めることが精度向上には不可欠だからだ。これまでも、テンプの大型化を筆頭にさまざまな技術開発が行われてきたが、オーデマ ピゲが採用したのはテンプを2枚にするという画期的な手法。
また、ヒゲゼンマイとそれらを同軸上に重ねることで等時性が大幅に高まり、従来よりも精度を30%向上することに成功した。さらに、この独自機構ならではのダブルテンプというユニークなスタイルは、文字盤のスケルトン化により、ケース両面からその動きを楽しむことができる。
 
※本文中における素材の略称は以下のとおり。
K18=18金、PG=ピンクゴールド


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