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2018.12.12

時計

【後編】“遠きにありて思うもの”にあらず。宇宙とツナガル

そもそも時を刻む行為そのものが天体の動きを視覚化したもの。月の動きを愛でるムーンフェイズにはロマンさえ漂う。翻って現代では、精度のため人工衛星と交信するまでに。時計を通じて遠い宇宙との“ツナガリ”を腕元に収める人智に改めて感じ入る。前編に続き、後編をお届け。

TASAKI タサキ
オデッサ トゥールビヨン
日本が誇る匠の技をちりばめた“小宇宙”

K18SAKURAゴールドケース、43mm径、手巻き。2700万円[受注生産]/タサキ 0120-111-446
2015年に時計界を騒がせたのが、日本のジュエラー、タサキの参入だった。その看板モデルが本作。ハイライトは、ブランドの象徴でもある、あこや真珠にホワイトゴールドを象嵌(ぞうがん)したムーンフェイズ機構。
ダイヤモンドとMOPを用いた星空に浮かぶ様がDLCコーティングが施された黒文字盤と好対照をなし、何とも詩的である。日本屈指の独立時計師、浅岡肇氏が手掛ける匠のトゥールビヨンといえる。
 

MEISTERSINGER マイスタージンガー
ルナスコープ
リアルな月が主役を飾るドイツ製一本針時計

SSケース、40mm径、自動巻き。49万8000円/モントレックス 03-3668-8550
まず目に留まるのは、写実的な月が描かれたムーンフェイズ。必要なのは128年に一度の修正だけという高精度も魅力だが、ダイヤル上半分を占めるその大きさは迫力がある。
そして、分針と秒針をあえて使わずに12時間で1周、1目盛り分を5分かけて進むワンハンド表示。太古の時代から変わらぬ姿で星空に燦然と輝く月、そんな悠久の時を刻んでいる。
 

SEIKO ASTRON セイコー アストロン
5Xシリーズ デュアルタイム
GPS受信速度アップで、素早く「つながる」

チタンケース、42.9mm径、GPS電波。23万円/セイコーウオッチ 0120-061-012
文字どおり宇宙に浮かぶGPS衛星とつながることで、絶対的な精度を追求するブランドのフラッグシップ。新作では、受信性能に関わるパーツを新開発して衛星サーチ能力を改善、最短3秒で時刻情報が受信可能。
伴う電力消費もさらに抑えた設計で、第2世代の「8Xシリーズ」の約半分となる低消費電力化、さらにソーラー充電部やムーブメントの小型化に成功、ケース自体もスリムとなった。
 

CARTIER カルティエ
ロトンド ドゥ カルティエ ミステリアス デイ&ナイト ウォッチ
グラフィカルな太陽と月をミステリアスに楽しむ技巧派

K18PGケース、40mm径、手巻き。680万円/カルティエ 0120-301-757 © Cartier
透明なディスクに描かれたゴールドの太陽が、浮かんで見えるミステリアス機構。カルティエが得意なこの技術をデイ&ナイト表示に応用したのが本作だ。時針の役割を果たす太陽が、通常の9時(この時計では6時)位置から昇り、6時間で上半分を半周しデイ表示を担当。沈みかけるとともに同じディスクに描かれる月が昇り始めて、ナイト表示に切り替わる。
放射状のギョーシェ彫りが美しいダイアル下半分は、レトログラード機構の分表示に当てられており、レイアウトの美的センスは世界屈指のジュエラーの名に違わぬもの。愛らしいビジュアルの裏に巧みな技術を忍ばせた技巧派の1本といえるだろう。
 
※本文中における素材の略称は以下のとおり。
SS=ステンレススチール、K18=18金、PG=ピンクゴールド
柴田 充、髙村将司、中村英俊、戸叶庸之=文、菊地 亮=取材


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