時計を新調するだけでお洒落が楽しくなる。誰しも一度はそんな経験があるだろう。それを検証すべく、4人のスタイリストに各自が惚れ込む腕時計に合わせてコーディネイトを考えてもらった。そのコーディネイト術の全容を前後編2回にわたり紹介。
1人目:スタイリスト 村上忠正さん
「然るべきときに、然るべき時計で飾る」
「タグ・ホイヤー」+レザーコートに鮮やかなストールの外しコーデ伝説の角形に負けじと、色や艶をぶつけてみる
村上さんは、初めて買った機械式時計がツウ好みな名作レマニア「レガッタ」と一筋縄でないチョイス。時計に限らず、シンプルデザインのなかに唯一無二の個性が光るものに惹かれるそう。その意味で、タグ・ホイヤーの「モナコ」は、惹かれ続けている一本だという。
「今欲しい角形時計はこのモナコ。ひと目でそれとわかる唯一無二の顔立ちが好きですね」。そこにショールカラーのレザーコート、そして複数の柄を配した鮮やかなストールを挿し、独自のセンスで時計に負けない遊び心を表現した。「ルールのない休日だから、ハズせるときにハズすのがポイントです」と村上さんは語る。
「A.ランゲ&ゾーネ」+モノトーンスーツスタイルハレの場で光らせる、最上級のエレガンスと個性
多くの人が“上がり時計”に挙げる名機「ランゲ1」。「エレガンスと艶っぽさが同居するところは、ほかのドレスウォッチにない魅力」と話す村上さんの憧れだ。
「所有する靴やベルトといった小物のメタルパーツがほとんどシルバーなので」という細かな部分も鑑みて選んだのが、ホワイトゴールドケース。「クライアントとの重要な会食や結婚式の二次会を想定した」と語るドレスアップスタイルとして、時計に合わせた黒×白のモノトーンのスーツスタイルを提案。
タブカラーシャツや細部のデザインがニクいコートで、紳士服のルールを熟知する男はささやかにハズす。然るべきときに然るべき時計を選べる“大人の嗜み”。このメリハリこそ、村上流なのだ。
村上忠正さん(48歳)
1969年、東京都出身。数々の人気メンズ雑誌を中心に活躍するベテランスタイリスト。ファッションのプロさえ唸らせてしまう非凡なセンスや豊富な知識は、全方位からリスペクトを受けている。
2人目:スタイリスト 石黒亮一さん
「隠された黒の多彩さを『黒』時計で浮き彫りに」
「カルティエ」+ライダースのアメカジスタイルアメリカンカジュアルに添える黒の気品とエスプリ
「普通に見えて、普通じゃない」といわれる石黒さんのスタイリング。それは時計を使ったコーデでも同様だ。「ライダーズだからといって、そのまま武骨な雰囲気の時計を合わせてもモノ足りない」という理由から選んだのは、「ドライブ ドゥ カルティエ」の黒ダイヤル。
「ローマ数字や線路型目盛りなどカルティエの伝統的なデザインをクッションケースに収めたデザインが独創的」と、これを腕元に加える。なるほど、アメカジの感性が由緒あるメゾンのエレガンスを纏うことでカジュアルアップ。定番の着こなしを華やかに“ドライブ”させる。
「タグ・ホイヤー」+セクシーなコートスタイルモードフレイバー薫るダンディなブラックコーデ
タグ・ホイヤーのスケルトンウォッチを石黒さんは「ケースやベゼルのマットなセラミックスの質感と露わになったムーブメントがオール黒になることで、スポーティな中にモードな印象が漂う」と分析。
「仕立ての良い上等なコートに合わせて、そのギャップを楽しみたい」と、ブーツや細デニムからなるセクシーなコートスタイルに投入。同じ黒に見えまったく違う。石黒さんが好きな「黒」を独自の視点から異なる解釈で着こなしへと落とし込む。
ともすると没個性的とも感じられる定番色の、多彩かつ豊かな表情を浮き彫りに。「普通に見えて、普通じゃない」神髄を見た。
石黒亮一さん(46歳)
1971年、愛知県出身。黎明期から本誌の屋台骨を支える看板スタイリスト。安定感のあるスタイリングは読者からの信頼も厚い。自身のトレードマークでもある、黒を使ったコーディネイトが真骨頂。
後編は
こちら。