2021.04.12
LIFE STYLE

松坂世代の会社代表が野球から学んだ、ビジネスに活きるマネジメント論

「37.5歳の人生スナップ」とは……

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スポーツマネジメントを主たる業務とする株式会社スポーツバックスの代表取締役、澤井芳信さん。

自身も「松坂世代」の球児であり、1998年 春・夏連続で甲子園に出場、大学野球、社会人野球を経てスポーツマネジメントの道へ。

2013年に起業しスポーツバックスを立ち上げた。

海外での仕事は「わからないことを楽しむ」

アスリートの移籍時など海外での仕事も多い澤井さんは、これまでボルチモア、テキサス、ボストン、シカゴなど多くのアメリカの都市での仕事を経験している。

海外で仕事をするときに意識をしていることは、「経験しないとわからないことばかりなので、まずは楽しむことですね。新しい環境や新しい場所に行くこと、新しい仕事をすること、そういったものは僕の中で楽しめる機会というモチベーションです」と澤井さん。

澤井さんの最初のアメリカ生活となった街・ボルチモアでは「ボルチモア・レイブンスというNFLのチームがあるんですが、試合があるときにスーパーマーケットに行ったら、スーパーの店員さんがみんなユニフォームを着たりして仕事しているんです。もう本当にスポーツが街の一部になっているんだなという、いいカルチャーショックでした。

ボストン・レッドソックスの本拠地であるフェンウェイパークやシカゴ・カブスのリグレーフィールドは、街中に球場があります。

普段通っている道路が、試合の日は封鎖されて道路が球場の一部のようになって、そこでみんなお酒を飲んだりするんです」。

試合時には、道路が封鎖され球場の一部のようになるフェンウェイ・パーク(本人提供)。

スポーツを取り巻く環境にしても、ケーブルテレビ文化や、都市ごとに人口・経済規模・カルチャーが大きく異なるアメリカと、メディア環境も異なりエンタメの選択肢も豊富な日本という違いがある。

「そういうアメリカのスポーツカルチャーを楽しめたのは、自分の引き出しが増えたといいますか、固定概念に縛られないようにしなきゃいけないと考えられるようになりました」。

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「価値」を委ねられる責任

澤井さんは、上原さんの現役引退後も、地上波のテレビ番組出演、YouTubeチャンネル、Yahoo!個人での執筆など、メディアでの上原さんの情報発信を手掛けている。

「YouTube『上原浩治の雑談魂』はちょうどコロナ禍の少し前(2020年1月)から始めたのですが、現在23万人以上のチャンネル登録者がいます。SNSなど、今はいろんな露出のやり方があるなと思いますし、このように登録者が増えるとひとつのメディアになります。

楽しんでもらうようにいろんなことを考えてやっていかなければならず。私だけの力ではなく、いろんな方に制作に入ってもらって一緒に作っていますよ」と語る。

スポーツバックス社内、澤井芳信さんのデスクの様子。

また、澤井さんはアスリートのマネジメントを手掛けるうえで「同じ価値観を持つこと、同じ方向に動くということは大切にしています」という。

例えば、澤井さんが2008年から担当する上原さんのマネジメントで意識していることは「上原さんの大学入学前の一浪時代とか、ジャイアンツでの1999年のルーキー時代の『涙の敬遠』や、沢村賞を受賞するほど活躍したときは、まだ関わりがないので、いわば自分は何もしていないわけです。

そのような積み重ねがあったうえで、弊社に所属してくれているというのは、その人が積み上げてきた自身の価値を委ねてくれていることなので、そこに責任があります。この人の価値を落とさないように、でも、らしさは出していきたいなという心持ちですね。

例えばメディアでの発信は内容が面白くないと見られないので、その辺りのさじ加減は難しいですよね。ただ前提としてマメに情報を更新していかないとファンも見てくれない。上原さんはSNSも積極的に更新してくださるし、おもしろいのでフォロワーが増えるんだと思います」と澤井さん。

ボストン・レッドソックス在籍中の上原浩治さん(写真右)の取材に立ち会う澤井芳信さん(写真左)(本人提供)。

さらに、スポーツバックスの今後についても聞いた。

「選手のマネジメントがもちろん主たる業務ですけど、企業の悩みをスポーツで解決するようなことをもっと考えていきたいですね。企業がアスリートを起用するとなると、イベントをすることが最も多いと思います。

例えば、イベントで大きな花火を上げてPRするのは簡単ですが、もっと企業によりそってスポーツやアスリートの価値を使って、継続的に課題解決に取り組める、そんな企画を考えたりしたいです。まだまだスポーツビジネスには可能性があると思っています」。

コロナ禍により変化が生じているスポーツ界で、新たな「価値」を作っていきたいと語る。

「衣食住は、誰もが絶対必要なことですよね。一方、スポーツって、人それぞれの定義が違うんですよ。エンタメと捉える人もいれば、健康と捉える人もいれば、教育と捉える人もいる。

スポーツの持つパッションだとか、うまくいっていないときにモチベーションを上げてくれるとか、汗をかいて発散するとか……つまり文化といいますか、自分にとってが、生きていくうえで必要でなくても、必要なものという感じですかね」。

スポーツの新たな価値を模索し続ける澤井さん。「スポーツマネジメント」は、彼が人生をかけて続けていく“スポーツ”であると、言えるかもしれない。

澤井芳信(株式会社スポーツバックス 代表取締役)
京都市出身。京都成章高では「1番・遊撃」の主将として1998年に春夏連続で甲子園に出場。夏は松坂大輔擁する横浜高と決勝で対戦し、ノーヒットノーランで敗れ準優勝。その後同志社大に進学。卒業後は社会人野球「かずさマジック」(元新日鉄君津)に入り、4年間の現役生活を経て引退。その後、スポーツマネジメントの会社で経験を積み、2013年に株式会社スポーツバックスを設立。2014年に早稲田大大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。
スポーツバックス オフィシャルサイト:www.sportsbacks.com/

「37.5歳の人生スナップ」とは……
もうすぐ人生の折り返し地点、自分なりに踠いて生き抜いてきた。しかし、このままでいいのかと立ち止まりたくなることもある。この連載は、ユニークなライフスタイルを選んだ、男たちを描くルポルタージュ。鬱屈した思いを抱えているなら、彼らの生活・考えを覗いてみてほしい。生き方のヒントが見つかるはずだ。上に戻る
松平伊織=写真 市來孝人=取材・文
# 37.5歳の人生スナップ# スポーツマネジメント
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