2021.09.06
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延岡メンマはなぜ注目を集めるのか?「アイスにも合うメンマを作った」31歳男性の衝撃

当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です。元記事はこちら

アイスの甘味とピリ辛味噌風味が絶妙に絡み合って未体験の味わいに(写真提供:LOCAL BAMBOO株式会社)

都心ではなかなか接する機会のない竹林。すらりと伸びた竹は風流なイメージすら抱くかもしれないが、全国的に環境破壊の元凶となっているのをご存知だろうか。

成長スピードが早い竹は、根が周囲に侵出したり、背の高さで陽光を遮ってしまい他の樹木の成長を妨げてしまう。対策を打とうにも森林の所有者の高齢化や担い手不足なども手伝って管理が行き届かず、現在、日本の多くの農村や山間部で放置竹林が深刻化しているのだ。

そんな中、竹を伐採するだけでなくメンマに加工することで食べて解決につなげようという動きが各地で生まれ始めている。じわじわとブームになりつつある「ご当地メンマ」だ。

アイスにも合う!?「延岡メンマ」の衝撃

宮崎県の県北に位置する延岡市。旭化成の企業城下町として知られる一方、市の面積の8割を山林が占めている。この地で設立されたLOCAL BAMBOO株式会社は、2020年11月から放置竹林対策の一環として「延岡メンマ」を生産・販売し始めた。

お米、パン、果てはアイスと一緒に食べても美味しい「延岡メンマ」(写真提供:LOCAL BAMBOO株式会社)

メンマと言われてつい想像しがちなのは、ラー油と醤油の味付けではないだろうか。だが、延岡メンマはまったくの別物。地元の渡辺味噌醤油醸造の赤麦みそと、延岡の伝統野菜七萬石とうがらしで味付けたピリ辛みそ風味は、深いコクを感じる一品に仕上がっている。

「メンマはどうしても料理のつまとか添え物、お酒のおつまみというイメージがありますが、竹林問題を解決するにはもっと消費量を増やさないといけない。そこで、メインのおかずとして主食の米にも合わせられる、汎用性の高さが必要だと考えて試行錯誤を重ねました」。

そう語るのは、LOCAL BAMBOO株式会社代表の江原太郎さん。ごはんのおかずだけでなく、メンマカルボナーラやメンマトースト、果てはメンマアイスクリームといった、これまでの常識を覆す食べ方を提案している。

アボカドやチーズとの相性もいい(写真提供:LOCAL BAMBOO株式会社)

「いろんな方々にメンマを楽しんでもらいたくて、プロの料理研究家さんと一緒に考案しました。延岡メンマはそのまま食べても美味しいんですが、熱を入れたときによりうまみを発揮するような気がしています。最近はトーストで食べるのがお気に入りですね」。

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31歳の江原さんは地元・延岡の出身。子供の頃から農業に関わる仕事に就きたいと考え、東京農業大学を卒業後は都内の農業系ベンチャー企業に就職した。

ビルの屋上を利用した都市型菜園の運営でビジネスと実践的な農業両方の経験を積み、退社後は個人事業主としてさまざまな農業プロジェクトに携わった。

放置竹林を意識するきっかけとなったのは2019年はじめ。30歳を機に地元へUターンしたときのことだ。

延岡メンマの生みの親の江原太郎さん(写真提供:LOCAL BAMBOO株式会社)

「実家が持っている山を見に行ったら、幼い頃に見た風景がガラリと変わっていて驚きました。木々は枯れているのに竹だけが恐ろしいくらいに生い繁っているせいでかつては通れた山道が通れなくなり、田畑が荒れ果てて使えなくなっていたんです。放置竹林の問題を自分事として初めて実感し、法人を立ち上げました」。

最初に対策として試みたのはタケノコを収穫し、都市部の飲食店へ卸すことだった。しかし、いざ実行してみると実家の山を1人で管理し、鮮度を保ったまま出荷するのは思いの外大変だった。

国産メンマを選んだ理由

そんな中、出会ったのが国産メンマだ。シーズン限定でしか扱えないタケノコと違い、メンマなら年間を通して生産ができる。調べてみると、放置竹林対策の一環として全国各地でメンマ作りが行われており、福岡の糸島市にあるタケマンという業者が国産メンマ作りを全国に広げるプロジェクトを行っているという情報をキャッチした。

「さっそく作り方を聞こうと思ってタケマンさんに電話してみたら、ちょうどその翌週に延岡市の隣町でメンマ作りの講習会を開くとのことで、今から思っても運命的なタイミングでした」。

以降、江原さんは延岡市から福岡の糸島市まで車で約5時間近くかけて何度も通い詰め、メンマ作りのコツを覚えていく。当初はメンマの原料が竹であることすらよく理解していなかったものの、数カ月後には1人で作れるようになっていた。

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現在、国内で消費されているメンマのほとんどは、中国産の麻竹(マタケ)を使ったもの。対して国産メンマのシェアはわずか1%にすぎない。

延岡メンマに使用している竹は、九州内でもっとも多い孟宗竹(モウソウチク)。タケノコのシーズンが終わる5月頃に1〜2メートルほどに育った幼竹(ヨウチク)を収穫し、カットしたうえで煮る。さらに発酵させ乾燥したところで再度お湯で戻し、味付けして完成する。

メンマの原料となる幼竹。人の背丈ほどに育った竹の先端だけ切ったものを使う(写真提供:LOCAL BAMBOO株式会社)

延岡メンマを商品化するうえで最初にぶつかった壁が幼竹の確保だった。商流に乗せるためにはある程度まとまった幼竹の量が必要だったが、実家の山だけはこと足りない。

そこでJA延岡のタケノコ部会に相談を持ちかけたところ、処分に困っていた規格外の幼竹を安価で譲ってもらえることに。互いの利害関係が一致したことで、一気に道が開けた。

「タケノコの生産にしても国産メンマにしても高齢者の割合が高く、平均年齢が70代。当時まだ20代でひよっこ同然だった自分はつい及び腰になり、収穫から加工まで全部1人でこなしてまずは実績を積もうとがむしゃらになっていました。

でも、放置竹林の解決はいろんな方々を巻き込んでこそ。地元のみそや伝統野菜を使うのもそんな意図からです」。

メンマの加工は近隣の就労支援施設に、仕上げの味付けとパッケージングはタケマンに委託するOEM方式を採ることで、自身は営業活動に専念できる体制を整えた。

可能性は無限大「延岡メンマ」2つの意義

商品のクオリティには自信があっただけに売り方には頭を悩ませた。地元の小売店に並べるには価格競争を余儀なくされる。それよりは社会性やストーリーをきちんと明示することでブランドを確立し、ITを駆使して県外の消費者に価値をアピールした方が正解ではないのか。

パッケージを東京在住時に知り合ったデザイナーに依頼し、キャッチコピーを「あなたの食欲が森を育てます」としたのも全国展開を意識したゆえだ。

いざネット通販のスタートまで漕ぎ着けると、江原さんの読みはピタリと当たる。ローカルではなく、圧倒的に都市部の人間が反応してくれたのだ。

「ほとんどのオーダーが東京をはじめとした都市部からの注文です。しかも女性が多くて、放置竹林どころかメンマの原料が竹であることも初めて知ったという反応をたくさんいただきました」。

現在、延岡メンマが江原さんの会社の収益に占める割合は2割程度。いずれかは自社工場を設け収益の大きな柱にまで成長させたいと考えているが、利権化したり市場を独占する気はない。それどころか本意はむしろその逆だ。

「シェア1%の中で争っても意味がない。いろんな地方の方々と問題を共有し、あくまでオープンイノベーションでやっていかないと」。

自分のやり方を全国の人に真似てもらうことでご当地メンマが増え、放置竹林の解決に一役買えれば本望だと語る。地方創生と環境保全の両義性を宿したメンマの可能性は無限大だ。

 

宗像 幸彦:ライター・編集者
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記事提供:東洋経済ONLINE

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