開発という名のもとに自然は壊されていく。そのような印象が強くあったから、法律のもとに守られる自然があると聞いて、不思議な気持ちになった。
レンジャーと呼ばれる自然保護官を務めた経験を持つ環境省の尾﨑絵美さんに、国立公園の在り方について詳しく伺った。
法律のもとに自然を守る制度が国立公園
サーフィンをしていると海岸環境が人の手によって壊されていく様子を見たり聞いたりすることがある。
治水工事で川の砂が流れず、ビーチが狭くなった。護岸工事で海岸沿いがコンクリートで堰き止められた。漁港の拡張工事で波が消滅した。高い防潮堤ができ海を感じながら暮らすことができなくなった。
しかし国による事業や制度には、自然を壊すものがあれば、自然を守るものもある。そして環境大臣が指定し、環境省が管理責任者となる国立公園は後者。日本の優れた自然と、その自然を愛で得られる感動とともに後世に伝えていくため、国が保護し、管理している場所なのである。
「日本の自然には素晴らしい魅力があります。島国であることを一因として固有種の割合が高いのが特徴で、動物には独自の進化を遂げた固有種が多く見られるガラパゴス諸島以上の多様性が見られます。
世界でも類を見ない豊かな自然が息づいている場所に行くと、普段の生活では出会いにくい光景に心を動かされ、癒やされますが、この感動は先人たちが継承してくれたために抱けるもの。
私たち世代だけで終わらせず、将来世代にも楽しんでもらいたい。そのような想いから、法律で自然を守る制度ができました」。
そう教えてくれたのは環境省の自然環境局に勤める尾﨑絵美さん。レンジャーと呼ばれる自然保護官を四国南西部に位置する「足摺宇和海国立公園」で務めた経験を持ち、現在は東京・霞が関の本省に勤務。現場での経験を活かし、国立公園利用推進室の室長補佐として国立公園のプロモーションに関わっている。
尾﨑さんがいう法律とは自然公園法のこと。優れた自然の風景地を保護し、かつ利用を促進することを大きな目的とするものだ。
国立公園を指定するのもこの法律。自然公園には、国立公園、国定公園、都道府県立自然公園の3種類があり、国立公園には日本の傑出した自然が見られる大風景地が選ばれる。
それは世界にも誇り得るもので、流氷が見られる北海道の知床から、サンゴ礁のパラダイスと呼ばれる沖縄県の西表島まで、全国で34カ所が指定されている。
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