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時代によって変化してきた国立公園の評価基準

冒頭の写真は鹿児島県の「奄美群島国立公園」に見られるマングローブ原生林。マングローブとは熱帯・亜熱帯地域の湿地帯や干潟に生息する植物の総称で、100種以上といわれる植物で構成される。
奄美大島のそれは、住用町にある役勝川と住用川が合流する河口域に見られ、大きさは71万㎡。明治神宮と同じくらいの大きさで、東京ドームでは約15個分に相当する。
文字どおりの大自然。そして大きな開発は見られず、人も排除しないところに国立公園ならではのポイントがある。
同エリアは人気の観光スポットになっており、カヌーやカヤックを使って原生林の中を進むツアーが多く提供されている。日本の誇る大自然が豊かなまま存在し、そこで遊ぶことができているのだ。
「守りながら利用することを目指す最初の国立公園は、1934年に瀬戸内海、雲仙、霧島の3カ所が指定され誕生しました。それからしばらくは“ザ大風景”が指定されていきます。言うなれば、わかりやすい大自然です。以降、時代の流れから、海中景観、湿原、生物多様性の豊かな場所なども対象になっていきます。
直近の2017年に指定された『奄美群島国立公園』も同様で、多くの固有・稀少動物が集中して分布する亜熱帯照葉樹林や、サンゴ礁、マングローブ、干潟といった自然環境の多様さが総合的に評価されました」。
国定公園だった場所が時代の要請から評価の視点が変わり、国立公園に指定し直したところもある。それは沖縄県にある「慶良間諸島国立公園」。“ケラマブルー”と呼ばれる透明度の高い海や、サンゴ礁が高密度に分布していること、ザトウクジラの繁殖地であることを背景に、沖縄海岸国定公園から削除された慶良間地域が国立公園に指定された。
時代によって変わるのは評価基準だけではないところも興味深い。
「高度経済成長期のように開発の波が強かった時代には、森林伐採や、道路やダムを造る工事、河川の治水工事などが多く見られました。
当時は環境庁として保護を頑張らないといけない時代。規制官庁として、時代の流れに逆行するような働きをしているイメージもあったように思います。
しかし近年は環境意識が高まっています。大規模開発は社会的にも良しとされず、現場に行くと地域住民の方が違反を見つけて報告に来てくれるようなことも増えました」。
環境意識の高まりから、理解を広く促せる時代になってきたのだ。


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