20代から好かれる上司・嫌われる上司 Vol.35
2021.01.29
LIFE STYLE

「信頼していたのに」と叱責する上司は20代から信じてもらえなくなる

「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……

社会人になると使われるようになる言葉「信頼」

私の過去の記憶を思い返してみると、学生から社会人になったときに、途端によく使うようになった言葉のひとつに「信頼」がありました。

体育会などの凝集性の高い組織に属していたような人を除けば、学生時代の帰属集団(クラスやサークル、アルバイトなど)は会社ほどには一体感もなく、ゆるい関係でしかつながっていないような場にしかいなかったからかもしれません。

しかし、社会人になって、チームで仕事を分担しながらひとつのゴールに向かうようになると、チームメンバーに対する信頼が必要になってきます。そのために、このような言葉遣いの変化が起こるのではないかと思います。

 

そもそも「信頼」とは何か

さて、社会人になるとこれだけ使われる言葉ですから、あえて「そもそも信頼ってなんだっけ」と考えることは少ないのではないでしょうか。

言葉を分解すれば「信じて頼る」ということです。もう少し詳しく言うなら「この人に任せれば(つまり、頼れば)こういう成果を出してくれるだろうから、信じて任せてみよう」ということです。

そして「信じる」とは何でしょうか。実はここが問題ではないかと思います。

ある言葉をどういう定義で使うかはある程度の幅があって当然ですが、例えば読者の皆さん自身は「信じる」ということをどのように使っていますか。

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「信じる」と「予想する」の違い

このことを考えるのに、似たような言葉を対比させてみましょう。例えば、「信じる」ということと、「(そうではないかと)予想する」とはどう違うでしょうか。

私は、後者にはさまざまなデータからの計算が前提にあって、その結果こうなるのではないかという意味で使っています。つまり、そこには「なんとかやってほしい」という願いや、「この人ならやってくれるのでは」という期待などは入ってきません。

前者の「信じる」は違います。計算によって予想するのではなく、ある意味、無条件性があるのが「信じる」です。明確な根拠はないけれどもできると願って、期待して、任せることが「信じる」ではないかと思います。

 

非行少年が更生の過程で必ずすること

ここで、ちょっと横道にそれたような話をします(関係があるからですが)。

非行少年の更生を支援している私の知人から聞いた話なのですが、非行少年は順調に更生してきたと思ったときに、一度支援者を裏切るような行為を行うというのです。

そこでのNG対応は「信じていたのになぜこんなことをしたのか」と問うことだというのですが、それはなぜでしょうか。

非行少年は自分を信じてくれる人に飢えています。そして彼らの「信じる」は純粋で、上述の「予想する」ではなく、無条件に信じてほしいと思っています。それが自分の自信につながるからです。

つまり、なぜ先の言葉がNGかというと、本当に無条件に信じていたのであれば、「信じていたのに……」ではなく、「何かの間違いだよな。君がそんなことをするはずがない」と、まずは事実が明らかになるまで信じ続けることなのです。

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多くの上司は部下のことなど信頼していない

すべての上司にここまでナイーブなことを要求するつもりはありません。しかし、純粋な人であればあるほど、信頼されるということは以上のような無条件性を含んでいるのです。

部下が何か問題を起こしたということを聞いて、第一声で「信頼していたのに、なんでこんなことになったんだ」と上司が言うなら、部下は本当の意味で信じてくれてはいなかったのだと心のどこかで思うことでしょう。

本当に部下を信頼していたのであれば、最初に言わなくてはいけないのは非行少年と同じで、「何かの間違いだよな。君がそんなことをするはずがない」です。それが自然に言えないのはその部下のことを信頼などしていないのでしょう。

 

信頼するならする、しないならしない

別に、純粋な信頼ではなく「予想」でも問題はありません。私も無条件に信頼できる人などほんのひと握りであり、一般的には信頼という言葉を使ったとしても、本稿での定義で言えば、実際には「予想」の範囲でその人のことを思っているだけのことが大半です。

しかし、やはり「信頼している」という強い言葉を使うのであれば、本当に信頼しているときに使うべきではないかと思います。信頼して任せて、それが良い結果が出なかったのであれば、それは仕方がないと思えるかどうかです。そう思えないのであれば、軽々しく「お前を信頼してこれを任せるのだが」と言うべきではないかもしれません。

細かいですが、「君ならこれをやってくれるだろうから(予想)、任せるよ」でいいのです。「信頼」というキラーワードは伝家の宝刀として、ここぞというとき、人に対して使う方がいいと思います。

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「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。
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組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。

 

石井あかね=イラスト

# 20代から好かれる上司・嫌われる上司# 信頼
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