ニューノーマルな時代の「大人カジュアル」ガイドブック Vol.24
2020.10.08
LIFE STYLE

今だからこそショーではない方法を。ホワイトマウンテニアリングからの新たな発信

生地に描かれたいくつもの部位が立ち上がり、一着のジャケットが生まれる。デジタルを駆使したプレゼンテーションが表現する服の原点。そこにデザイナーの思いがこもる。

 

「作りたかったのは自分の着たい服」

ファッションは時代を映す鏡といわれる。だがいつからだろう。どこか曇りが感じられるようになったのは。流行のサイクルはより短くなり、“映え”に消費される。さらに社会的な問題も顕在化してきた。そこへ否応なく新型コロナウイルスは襲来した。

「でもこれをコロナ禍と考えるか、業界の慣例が変わる潮目と捉えるかの違いだと思うんですよ」とファッションデザイナーの相澤陽介さんは言う。

相澤陽介●1977年、埼玉県生まれ。多摩美術大学を卒業後、2006年にホワイトマウンテニアリングをスタート。
相澤陽介●1977年、埼玉県生まれ。多摩美術大学を卒業後、2006年にホワイトマウンテニアリングをスタート。これまでにさまざまなブランドのデザインを手掛ける。’19年からは、北海道コンサドーレ札幌のディレクターにも就任。また、’20年春夏よりラルディーニ バイ ヨウスケ アイザワをスタートさせた。

「僕はポジティブに考え、これまではコレクションでの発表を前提に服を作ってきましたが、それとは違う発想でやらざるを得ない。そこで服作りとは何だろうというところからスタートしました」。

原点に立ち返ったとき、作ろうと思ったのは43歳の今の自分が着たい服だった。

「普段着ている黒を選んだのもそうだし、今回ラペルドジャケットを作ったのも僕自身がそういう服を着る機会が増えたからです。目を引くデザインよりもパターンにこだわり、着やすさを追求しました。

また通常は春夏のコレクション時季にあえて秋冬を発表し、すぐに店頭に並べる。今着たい服ということで、シーズンという考え方も壊したかったんです」。

そして発表の場もショーではなくウェブのみに。

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常に先を見ていたからできたこと

「それもまったく違うことを考えなければイマジネーションが分断されてしまうように感じて。たとえば無観客ランウェイのような、従来を踏襲したギミックでごまかすのではなく、それならばもうフルデジタルでいこうと。

ただデジタルにしたことで、むしろ伝えにくかった着やすさやパターン、そして今回のテーマも一貫して上手に表現できたと思います」。

不測の事態とはいえスピード感を持って対処できたのは、既にその先を向いていたからだろう。

「そうでなければ、何をやるべきかも迷っていたでしょうね」と手応えを語る。

「今のファッションはとても大きな変化の流れの中に位置づけられていると思います。僕自身の大きな変化としては、タブレットPCを使い10年ぶりぐらいにスタイル画を描くようになりました。

これもリモートで作業するうえで相手の理解をより深めるためでしたが、それも今のデジタルテクノロジーによってできた。今後こうしたデザインのプロセスやワークフローも変わっていくでしょうね」。

新作のラペルドジャケットに袖を通してみた。ゆったりとしたサイジングにもかかわらず、ソリッドな印象だ。何よりも着心地がいい。出来上がった試作にさらに入念に手を入れ、完成させたそうだ。

禍は“わざわい”だが、はたしてそうだったのか。相澤さんの服からは、時代を反映するファッションの醍醐味と未来への懸け橋が感じられるのだ。

 

川西章紀=写真(人物) 柴田 充=文

# ホワイトマウンテニアリング# デザイナー
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