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常に先を見ていたからできたこと

「それもまったく違うことを考えなければイマジネーションが分断されてしまうように感じて。たとえば無観客ランウェイのような、従来を踏襲したギミックでごまかすのではなく、それならばもうフルデジタルでいこうと。
ただデジタルにしたことで、むしろ伝えにくかった着やすさやパターン、そして今回のテーマも一貫して上手に表現できたと思います」。
不測の事態とはいえスピード感を持って対処できたのは、既にその先を向いていたからだろう。
「そうでなければ、何をやるべきかも迷っていたでしょうね」と手応えを語る。

「今のファッションはとても大きな変化の流れの中に位置づけられていると思います。僕自身の大きな変化としては、タブレットPCを使い10年ぶりぐらいにスタイル画を描くようになりました。
これもリモートで作業するうえで相手の理解をより深めるためでしたが、それも今のデジタルテクノロジーによってできた。今後こうしたデザインのプロセスやワークフローも変わっていくでしょうね」。

新作のラペルドジャケットに袖を通してみた。ゆったりとしたサイジングにもかかわらず、ソリッドな印象だ。何よりも着心地がいい。出来上がった試作にさらに入念に手を入れ、完成させたそうだ。
禍は“わざわい”だが、はたしてそうだったのか。相澤さんの服からは、時代を反映するファッションの醍醐味と未来への懸け橋が感じられるのだ。
 
川西章紀=写真(人物) 柴田 充=文


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